2020-09-13

Laurindo Almeida / Guitar From Ipanema


この夏、一番よく聴いた一枚。イージー・リスニング的なボサノヴァとでもいいましょうか。キャピトルより1964年のリリース。
ローリンド・アルメイダはブラジル出身のギタリストなのですが、ボサノヴァ勃興以前より米国で活動していまして。そうするとルーツを生かしたというよりは流行に乗って作られた企画物と考えていいのかな。わたしにとってアルメイダというのは、ジョーニイ・サマーズと一緒にボサノヴァのレコードを作っていたひと、というくらいの認識でありましたが。

これはギタリストのリーダーアルバムではあるけれど、あまりギタープレイには言及されることがなく、どちらかというと全体のアンサンブルやサウンドの感触でもって好まれてきたようであります。
実際の演奏も控えめなんですよね。エレクトリック・ギターをフィンガーピッキングで弾いていまして、芯がくっきり太いながらまろやかな音。それで美麗にメロディを奏でていることが多く、よく聴いていると素晴らしく切れのよいプレイを見せる瞬間があるのですが、あまりそういうのは前には出てこない。でもって、涼やかでカラフルなフルート、口笛やオルガンなんかが入ってくると、それらのほうが目立つわけです。また、2曲だけアイリーン・クラークのボーカルが入っていて、そこではガット・ギターを弾いているのですが、そうなるともう歌伴という印象です(すごく巧いんだけれども)。

アルバム全体としてはなんというか流石なものですね。まあ、気持ちいいわ。リッチ。聞き流しても心地良いし、しっかり聴けば、それなりに応える部分もある。ボサノヴァのくくりのなかで、しっかりバラエティもあるし。ちょっとケチのつけようがない。

そんなシリアスに聴くものではないかもしれませんが、ちゃんとした大人がちゃんと考えて作った音楽ですよね。いいのはジャケットだけじゃあないぜ、という感じ。
不安定さを取り除かれたボサノヴァというのは非常にアメリカ的だな、なんてことも思ったり。