2018-11-25

Hugo Montenegro / Lady In Cement


フランク・シナトラ主演の私立探偵もの映画「セメントの女」(1968年)、そのサウンドトラック盤。リイシューは2002年に英Harkitから。ボーナストラックとして別テイクが二つに出演者のインタビューが入っております。
Harkitという会社、評判は必ずしもよろしくない。音源がアナログ起しだったり、他社から限定で出ていたもののコピー臭かったり、あるいは権利をクリアしていないものを発売していたり。しかし、レアなタイトルを持ってくるので、なかなかに悩ましい。
この「Lady In Cement」も他所はどこも手を出してこなかったのだ。音質のほうはそこそこで、我が国の紙ジャケリイシュー専門の会社とどっこいってところ。

音楽そのものはとても良いのです。11曲中3曲は古い映画の挿入歌で、甘いムードのものでもしつこくなく、さらりと仕上がっているのは流石。そして、残りは全てヒューゴ・モンテネグロ自身のオリジナル。サスペンスを掻き立てるような都会的でジャジーなものや、いかにも'60年代らしい軽やかで優美なラウンジ調、荒々しいアップ(ハル・ブレインが大活躍だ)などさまざま。いずれもカラフルな音使いが楽しい。
中でも特に良いのが、ベイラー兄弟と思しい男声スキャットが涼しげな2曲。テーマ曲 "Lady In Cement" ではハープシコードがクールな雰囲気を強めているようで実に効果的だし、"Tony's Theme" でのバカラック的な管アレンジも洒落ている。こういうのばっかりだと、また飽きてくるのだろうけれど。

アレンジを生業としていたプロにとっては、さまざまなジャンルなど素材のひとつに過ぎないわけで。その自然な加工っぷりが音楽家としての大きさを示しているようで格好いい。
サントラやイージーリスニングには巨大な実験場としての面もあったのではないか、などと考えてしまった。

2018-11-04

The Action / Shadows And Reflections: The Complete Recordings 1964-1968


アクションのコンプリート集4CD。再結成以前の音源は一通り入ってます。英Cherry Red傘下のGrapefruitからのリリースで、監修は実績と信用のアレック・パラオだから、まず安心。
ブックレットも写真満載かつ、グループの歴史がしっかり書かれたもので、レコーディングのデータやエピソードも細かくあって、読みでがあります。
しかし、CDの収納が独特で、ちょっと面食らった。トレイ真ん中に爪がなくて、周辺部を押して引っ掛けるタイプ。耐久性に不安を感じるのですが。




ディスク1は「ESSENTIAL ACTION: THE PARLOPHONE MASTERS」と題され、ジョージ・マーティンの手掛けたスタジオ・レコーディングとBBCセッション5曲の全22曲がモノラル・ミックスで収録。
彼らのシングル曲の殆どについては、そのオリジナルのミックスでは初のCD化となります。これまでは'90年に作成されたリミックスがずっと出回っていたわけです。とりあえず、これがアクションのスタンタードであるよ、と。荒々しさだけでなく、しなやかさを感じさせるR&Bの消化の仕方が実にモッズど真ん中、という感じで粋ですなあ。
BBCのほうは(ここに収められた分に関しては)音質良好、モータウンやバーズのカバーも演ってます。

ディスク2は「THE ACTION AT ABBEY ROAD: STEREO MIXES AND OUTTAKES」。ステレオ・ミックスが15曲にリハーサル、別テイク、バッキング・トラックらで計24曲、全てが初登場となります。
これらは新規にマルチトラックよりミックスされただけあって、すごくクリアな音質です。息遣いのようなものが生々しい。今回のリリースでの一番の収穫でしょう。また、リハーサルのラフな感じも中々の格好良さ。ボーカルもシングル・トラックだし、曲によってはアレンジの違いも聴けて良いです。

ディスク3は「ROLLED GOLD PLUS: THE LOST 1967-1968 RECORDINGS」。「Rolled Gold」もしくは「Brain」といったタイトルで'90年代半ばに出された音源が15曲に、レグ・キング脱退後の曲が5曲(これらは1985年に「Action Speak Louder Than...」としてリリースされましたが、メンバーには無断であったとのこと)。
「Rolled Gold」は元々がモノラルのデモテープ、それをコピーしたものであり、曲によってはアセテートから起こしたとあって、やはり音質には幅があります。なお今回、編集の違う複数のソースからできるだけ長いものを選んだ、とは記されています。また、いくつかの曲はこれまでのものよりテープ・スピードを適正にした、とも。
スモール・フェイシズとプリティ・シングズの間を行くようなこれらサイケ・ポップは今聴いても十分に格好良いっす。

ディスク4「EXTRA ACTION」はここまでに入らなかった残りをさらったという内容。
前身バンドであるボーイズの曲から、デッカでのオーディション音源、BBC出演時のもの(こちらの音質はまちまち)が12曲目まで。あとは尺が余ったのか1990年にEdselからリイシューされたときに作られたミックスから8曲が選ばれています。
BBCでも実際に客前で演ってるものは熱が違いますな、うむ。あと、Edselミックスは改めて聴くとエコーが深くて、オリジナルと比べるといじった感があるかな。

しかし昨年のクリエイションといい、アクションまできちっとした形でまとめてくれたので、個人的にはもう目ぼしいところは残ってないかも。