2022-06-13

The Aerovons / A Little More


昨年に英国でリリースされていたエアロヴォンズの新作が、今年になって我が国でも流通するようになりました。名義こそグループですが、実質はトム・ハートマンのソロ・プロジェクトのようです。

サウンドの方はベースとドラムがいかにもアビー・ロード・スタジオ謹製だった前作と比較する(のもおかしいのだが)と、わりと普通に現代らしいバランスのギターポップになっています。
それでもレイト・シクスティーズ流儀のアレンジやイフェクトは楽しく、トーンを絞ったリード・ギターはまるでジョージ・ハリスンのよう。美しくもしつこいハーモニー・アレンジも好い。
楽曲の方はというと、これがメランコリックでいいメロディのものが揃っていて。リード・ボーカルとバック・コーラスのコール&レスポンスで構成されている部分も多いし、ミドル・エイトの利かせ方といい、はっきりと‘60年代ポップスらしさが感じられます。

"Me And My Bomb" は非常にマッカートニー的な節回しが楽しく、一方 "So Sorry" はホワイト・アルバム期のジョン・レノンへのオマージュのようでもある。また、タイトル曲の展開は「Abbey Road」を思わせます。
他ではビーチ・ボーイズを意識した "The Way Things Went Tonight"、ここで聴けるレンジの広いハーモニーはかなり真面目に寄せていて微笑ましい。
かと思えば、メロウなシンセ・ポップ "Shades Of Blue" は再結成後スタックリッジのジェイムズ・ワーレンのようだ。
そんな中でもオープナーである "Stopped!" が、甘さを漂わせた鍵盤とエッジの利いたギター、美麗に層をなすハーモニーがうまく溶け合って、全体の仕上がりとしては一番決まっているかな。

全部で8曲しか入っていないのでボリューム的には少ないのですが、その分、埋め草がなく聴きごたえのあるポップ・アルバムではないかと。