2025-03-09
Badfinger / Head First
昨年の暮れにバッドフィンガーの「Head First」の50周年盤というのがリリースされました。実際に「Head First」が世に出たのは2000年ですが、制作されたのは1974年の12月なのです。
過去に出された「Head First」は、録音エンジニアによってリファレンス用に作成されたラフ・ミックスがもとになっていました。マルチトラックは無くなったとされていたのです。
で、ややこしくも長い事情を短くすると、オリジナルのマルチが最近になって発見されたと。この50周年盤はそこから新たにミックスがなされたもので、曲順も変わっています。ラフ・ミックス版は演奏がラウドでボーカルがやや引っ込み気味だったのに対して、新しいものはすっきりとバランス良くまとめられていますし、音質も当然、良くなっています。
また、"Saville Row" という30秒ほどのインストは、新たにレコーディングが加えられて2分弱くらいの曲になっています。
アルバム自体は期間の限られた状態の中、急ぎで作られたものです。あまりに余裕がなかったため、アップルでの最後からワーナーに移ってからの2作目までを手掛けていたクリス・トーマスは仕事を辞退しています。実際、それまでの作品と比べれば充分なプロダクションがされたものとは言いかねるし、オルガンを入れたことで厚みは増したもののアレンジの幅は限られている。
そういったように最上の部類のバッドフィンガーではないのですが、彼らの魅力ははっきり感じられるし、今回のリリースでようやく「Head First」をひとつの完成された作品として受け入れられたような気もします。
2024-11-10
Chris & Peter Allen / Album #1
まさにサンシャイン・ポップのファン待望のリイシュー、と言いたいところなのだが。出してくれたのは隣接権切れ専門のオールデイズレコード。ということは板起こしか。
国内流通仕様の輸入盤という体になっていますが、例によって音源のライセンスに関するクレジットは何も記されていませんし、原盤を出しているはずの台湾の会社「ONCE MORE MUSIC」で検索をかけてもオールデイズレコードのカタログしかヒットしません。著作権の緩い台湾で出されたものを、こちらは輸入しているだけ、という建前で法律を搔い潜ろうとしているように思うのは穿ち過ぎか。
ついでにケチをつけるとライナーノーツの文章は日本語として結構ひどいです。また、クリス&ピーター・アレンのキャリアに触れた部分は主にウィキペディアからの情報を単なる想像で補ったものですが、その中で彼らはジュディ・ガーランドとともに来日して、その後3年近く日本に住んでいた、なんて書いてあります。1964~67年ということになりますが、その間もABCよりシングル・レコードを出したり、ガーランドのTVショウに供に出演していたわけで、流石に話に無理があるのでは。
さて、本題ですが。
「Album #1」は後にソロで身を立てるピーター・アレンが、男声デュオ時代に残した唯一のアルバム。1968年、Mercuryからのリリース。
プロデュースはアル・カーシャ、アレンジはジェリー・ロスとの仕事でお馴染みジミー・ウィズナー。ということはニューヨーク録音ですかね。
この頃、ピーター・アレンはまだ本格的に作曲を始めていなかったせいか、収録曲は外部の作家によるものか、有名なもののカバーとなります。
突出していいのはアル・カーシャが自分で書いた "Ten Below"。これなんていくつものコンピレイションに採られて、既にクラシックだと思うのだが。自然な転調を利かせたキャッチーなメロディに、シャッフル・ビートと細かく動くベースラインが気持ちを浮き立たせ、鉄琴や洒落たトランペットらが華やかな雰囲気を盛り上げる素ん晴らしい出来栄えであります。
他では、トニー・パワーズ&ジョージ・フィショフ作の "A Baby's Coming" もドリーミーでドラマティックなアレンジが良いです。
カバー曲ではスタンダードの "Just Friends" が気に入っております。ジャジーな感触を残したソフトサウンディングなポップスとして、同時期のA&Mレコードと通ずるようなテイストがたまらない。クリス・モンティズも取り上げている曲ですが、わたしはこちらの方が好みです。
残りの曲も手をかけたプロダクションで、メドレーになっている曲などはいわゆるバーバンク・サウンドを思わせます。歌声の弱さが気になる瞬間もあるのですが、全10曲で25分ほどしかないので、するっと終わってしまう。
これで音質がよければねえ。
なお、ボーナストラックとして、1966年にABCより出されたシングルの中より2曲が選ばれています。これらはどちらもピーター・アレンの自作で、うち "Two By Two" はP. F. スローン&スティーヴ・バリーが制作、マージー・ビート風からフォーク・ロックへと変化するアレンジが面白い。もう一曲の "Middle Of The Street" は相方のクリス・ベルとの共作で、こちらはなかなかの佳曲。力強く歌おうとして、却ってへなちょこになってしまっているのはご愛敬。
2024-09-22
Odell Brown / Odell Brown (eponymous title)
1960年代から活動していたオルガン奏者、オーデル・ブラウンの’74年にリリースされたアルバム。オリジナル発売元はPaulaという、R&Bファンには知られたJewel傘下のレーベルです。
レコーディングに関するデータが殆どなく、プロデュースとアレンジはブラウン自身になっていますが、参加ミュージシャンについては何もわかっていませんし、産地も不明。
また、リイシューCDの音質はそれほど良くはないです。元々がどうだったのかはわかりませんが。
音楽の方はエレピが主役の、それはメロウなソウル・ジャズ。
オープナーがスティーヴィー・ワンダーのカバー “I Love Every Little Thing About You” で、耳当たりの良さではこの曲が一番になります。といっても11分あるのだけど。まろやかなオルガンがメロディを奏で、サックス、女声コーラスも入る中、エレピがリードを取るリラックスしたR&Bインスト。後半になるとワンフレーズを繰り返すベースギターを中心に据えて、ゴスペル風に盛り上がっていく。アルバム中でもこの曲だけが陽気な感じ。
あとの4曲はブラウン自身か、あるいはラリー・シムズというトランペッターによるオリジナルです。
”Tasha” はループ感を漂わせるベースがグルーヴを作り、いかにもフュージョンっぽいフレーズをサックスが提示する。進行していくうちにアブストラクトな展開も入るが、手触りはあくまでソフトなジャズ・ファンク。
アナログB面にあたる後半はアコースティック・ピアノの独奏から始まる。”South Of 63rd” はフルートが舞うラテンジャズ。ちょっとギル・スコット・ヘロンを思わせたりも。
続く “Song Theme” はスウィートでスロウなワルツ。途中からすこしテンポを上げてソロを回し始めるが、メランコリックなムードは維持されています。
ラストの “Simizzoke” は抒情的な導入から、ニューソウル~ブラックスプロイテーション的な雰囲気を持ち合わせた都会的でクールなファンクへと展開する。しっかりとしたアレンジが施されていて、ちょい恰好いい。
演奏そのものはジャズなんだけれど、サウンド構築で聴かせる面も大きいという印象で、裏方としてのキャリアが生きた好盤ではないかと。オルガンが最初と最後の曲にしか入っていないのが、個人的にはすこし残念。
2024-05-27
Chris Clark / The Motown Collection
モータウンで1960年代に活動した白人女性シンガー、クリス・クラークの2CD音源集。2005年に英国で出されたれたもので、やはりかの国でのこういった音楽のニーズは高いのですね。
ディスク1にはリリースされた二枚のアルバムとシングル・オンリーの曲が25曲。ディスク2には未発表のものが同じく25曲収録されています。
一枚目のアルバム「Soul Sounds」は1967年リリース。シングル曲を中心にした寄せ集めらしく、曲ごとに違うプロデューサーがついています。音楽のほうは当時の典型的なデトロイト・ノーザンなのですが、さすがに往時のモータウンらしい軽快かつシャープな仕上がり。主役のクラークさんは力強くもしなやか、少しハスキーなところのある歌声で恰好よく乗りこなしています。
全体に安心して聴けるアルバムですが、スマッシュ・ヒットした "Love's Gone Bad" はホランド=ドジャー=ホランド制作ながら、モータウンの類型を抜け出した仕上がり。思わず「おっ」となりますね。
「Soul Sounds」が時たま話題に上がるアルバムとすると、その二年後に出されたセカンド「CC Rides Again」は単独での再発もなく、滅多に触れられることもありません。このアルバムをリリースするためだけにモータウンはWeedというサブ・レーベルを立て、さらにレコードにはクリス・クラークの名はなく、ただ「CC Rides Again」と書いてあるのみと、オブスキュアの見本のよう(実際、200枚ほどしか売れなかったそう)。
中身の方はというと、これが一枚目とは全く違うものになっているのですね。いわゆるモータウンらしいサウンドではありません。プロデュースを任されたディーク・リチャーズによればR&Bのファンは良く知らない白人女性シンガーの歌など聴きたくならない、という判断がなされたそうで(何を今更、ですが)、ターゲットとするマーケットを変えたのでしょう。また、とても急なスケジュールで制作されたためにオリジナルの楽曲は2曲しか用意できず、残りは当時のヒット曲や有名曲のカバーとなっています。
聴き始めるとアルバム冒頭、いきなりウィリアム・テル序曲が流れ出し、面食らうこと必至。しかし、それに続く "C.C. Rider" がかなりいけてるスワンプ・ロックで一安心。残る曲もブルー・アイド・ソウルとして聴けるものと、がっつりミドル・オブ・ザ・ロードなポップスの混交で、同時代のダスティ・スプリングフィールドに近いテイスト。歌唱も申し分なく、期待するものを間違えなければ悪くない出来なのです。中ではアルバムの為のオリジナルである "How About You" がソウル色はまったくありませんが、普通にソフトサウンディングなポップスとして気に入りました。
なお、未発表曲はどれもきっちり最後まで仕上げられており、それが公式リリースされたのと同じ量あるというもので、モータウンのシステム化されたプロダクションの凄さを感じます。他のシンガーやグループで親しんできた曲の少しアレンジの違うヴァージョンなども楽しめ、‘60年代モータウン好きなら不満なく聴くことが出来るかと。
2024-03-03
The Grays / Ro Sham Bo
米国産パワー・ポップ・カルテット、1994年の唯一作。今年で30周年ということになるな。
このグループは、ジェリーフィッシュを抜けたジェイソン・フォークナーがソロ・デビューする前に参加した、といえば通りは良さそうである。
アルバムの方はドラマー以外の三人が曲を書き、それぞれ自作を歌っていて、誰かしらリーダーによるワンマンというものではないように見える。ただし、フォークナーは後のインタビューで、あのレコードに収められている演奏の大半は僕がやった、とも言っている。どうも彼にとっては、あまりいい経験ではなかったようだ。
そのフォークナーの曲は、既に作風が出来上がっていて、他のメンバーのものと比べ、練度ではひとつ抜けているように思います。シングルになった "Very Best Years" もいいが、ベストは骨太なメロディをもつ "Friend Of Mine" かしら。
ただ、バンド・サウンドがときにヘビーに寄るところがあり、曲によってはそれが合っていないような気がします。このひとはやっぱりソロが良かったのかも。
ジェイソン・フォークナーをグループに誘ったのがジョン・ブライオン。現在は映画音楽の制作や、他人のプロデュースなどが主な仕事だが、いまのところ一枚しか出していないソロ・アルバムが凄くいいのです。
で、そのソロ・アルバムには繊細で、メロウな手触りもあるのだけれど、ここではギター・ポップのスタイルに沿った曲を披露しています。"Same Thing" は凄くキャッチーだし、"Not Long For This World" もメロディのフックが効いている。また、ナイーヴな感じの歌声は既に独特の魅力を発揮しております。
そして3人目のソングライター/シンガーがバディ・ジャッジ。実はこのひとのキャリアが一番興味深いのだが、それは置いて。このジャッジさんの曲も、明解な "Everybody's World"、泣きの入った "Nothing" など荒々しさの中に英国ポップ風の味付けが生きていて決して悪くはないのだけれど、個性という点では一歩譲るか。
正直、飛び抜けた特長には欠けるのですが、細かいアレンジは考えられているし、楽曲自体にも良いものがあって、捨てがたい一枚です。
2023-12-17
はっぴいえんど / はっぴいえんど (eponymous title)
近年は加齢及び長年の酷使のせいで聴力が衰えてきております。旧譜を新しいマスタリングで出し直されても、元となるマスターテープが同じだとそんなに大きな変化を感じない場合が多くなりました。これブラインド・テストだとわかんないかな、という。実際には波形が前のと一緒じゃん、という詐欺に近いような製品もあるのですが、それは置いといて。
まあ、リマスターに対して食指が動きにくくはなっているのですよ。
はっぴいえんどの新規盤なんですけどお。これも、もういいかな、お値段もするし。でも「風街ろまん」のマスターテープはオリジナル・アナログから最近までに使われていたものより世代がひとつ若いものになっているというじゃあーりませんか。
などと迷った末、結局三タイトルとも入手しました。とはいっても音質の向上を一番期待していたのは「風街~」ではなく1970年に出た一枚目、通称ゆでめん、なのです。
4トラックでのレコーディングのせいか、もしくは当時の我が国の録音技術の限界か、はっぴいえんどのファースト・アルバムは音が瘦せているという印象です。同時代のアメリカのバンドのようなサウンドを目指し、エンジニアにレコードを聴かせて、こんな風にしたいんだとミーティングを行ったはずが、できたのは日本的な湿り気というか抜けの悪さ、寒々しい音で、何がバッファロー・スプリングフィールドだよ、という。曲自体は凄く良いのにね。
次作の「風街ろまん」ではその問題が嘘のように解決されていることもあって、なんとかならないかしら、と思っていたのですよ。
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初回限定盤のブックレットは資料として充実したもの |
で、新しいのを聴いてみたんですが。結論からいうと改善はされています。湿度を感じさせる音のキャラクターそのものはもちろん変わりませんが、ちゃんと迫力のある、バンドとしてのエネルギーが伝わってくるものになっています。
技術の進歩とはえらいものだな、と阿呆みたいな感想をもってしまいました。
「風街ろまん」はスマートなんだけれど、このデビュー盤のほうが濃いというか、引っかかる部分が多いのね。それで繰り返して聴いちゃう。
2023-10-09
Dee Dee Warwick / Foolish Fool
ディー・ディー・ワーウィック、1969年にMercuryよりリリースされたセカンド・アルバム。
二年前に出されたファーストがそうであったように、それまで断続的に録音されていたものを集めたもので、シングルが当たったタイミングでそれらをまとめて出した、という感じ。
ゆえに統一感はないですが、内容はいい。全11曲中6曲は前作でも大半を手掛けていたエド・タウンゼントがプロデュース。アレンジャーはレネ・ホールで、このふたりはマーヴィン・ゲイ「Let’s Get It On」A面でもおなじみの組み合わせ。落ち着いた調子の曲が多いのだけれど、ヒットしたタイトル曲は固めのドラム、リード・ギターが妙に恰好よく、迫力あるボーカルをあおる。都会的なミディアム "Where Is The Rainbow" も爽やかで良いです。
また、ギャンブル&ハフがプロデュース、ジョー・レンゼッティがアレンジの “It’s Not Fair” はオーソドックスなスロウかと思わせていきなりの転調が印象的。
個人的に好みなのはジェリー・ロスが制作した2曲で、アレンジはジミー・ウィズナーが担当。"When Love Slips Away" はイントロからして高揚感のあるミディアム・スロウ。"Don't You Ever Give Up On Me" はすこしモータウンを意識したふしも感じられる、伸びやかなノーザンダンサー。
あとニーナ・シモンが初出となる "Don't Pay Them No Mind" は実はディー・ディー・ワーウィックのほうが先に録音していて、という。ニーナ・シモン版の方がアレンジがシンプルな分、楽曲自体のもつ魅力はダイレクトに伝わってくるのだけれど、ビブラートがどうも苦手で。いずれにしてもいい曲ではあります。
唄が凄くうまいのに、変に曲を崩したりはしない。こういうシンガーが好きなのですよ、わたしは。
2023-08-27
The Sound Gallery
歳を取ったせいもあるのだろうけど、ここ数年で音楽への興味が急激に変わってきました。普段聴く音楽のうち歌物の所謂ポップス、ロックといったものは二割程度となり、あとは大体インストものばかり。サウンド志向が強くなったのだけれど、それにしてもかなり急な変化でした。
おそらく、そうなったきっかけのひとつが「The Sound Gallery」という1995年に出たコンピレイション。1968~76年の間に英EMIよりリリースされたイージー・リスニングを中心に編まれたものです。
実は昔にこれを聴いたときには、全然ピンと来なかったのよなあ。イギリスのオーケストラの録音は抜けが悪いなあ、もっさりしてるなあという印象で。サウンドの感触が好みではなくて、しっかり聴き込む気にもならなかった。
それが数年前、気まぐれに聴き直してみたところ、あれ、こんなに良かったんだ、と思ったのですね。今でも管弦の響きやエコーに野暮ったさを感じる曲はあるのですが、それらがあまり気にならなかったのです。歳を重ねておおらかになったのでしょうか。そうして、ようやく演奏の中身にまで踏み入ることができるようになったというわけ(ちなみに昔に聴いていいと思ったのは一曲目、デイヴ・ペル・シンガーズの "Oh Calcutta" でした。思えばコンピレイション中、この曲だけが米国産だったのだな)。
まあ、わかりやすくも格好よくてアレンジの洒落た曲がいくつもあります。クレジットを見るとライブラリー・レコードからの選曲が多いのです(特にKPM)。それで、この「The Sound Gallery」再見以降、ライブラリーに絞ったコンピで良さげなのを探して聴くようにもなりました。
しかし、この方向も掘り出すとキリがないでしょうね。もし、本腰を入れてやるなら、いっそ配信買いにシフトした方がいいのですが。
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ボリューム2もあって、こちらもなかなか |
2023-07-22
Neil Young / Harvest (50th Anniversary Edition)
近年のニール・ヤングは過去の音源を何しろ色々出していて。わたしはそれほどしつこくフォローはしていないのだけれど、'70年代のニール・ヤングにハズレはない、というのは間違いない。しかし、近い時期の弾き語りライヴがいくつもあって、それぞれの内容の区別があまりついていないのも本当のところだ。
で、昨年の暮れに出た「Harvest」(1972年)の拡大版なのですけれど。CD3枚+DVD2枚にハードカバーのブックレットという構成で、「After The Gold Rush」の50周年がボーナス2曲にとどまったのに比べると、手厚いつくりではありますが。正味の音源の量でいうとそうでもないか。
ディスク1は本編のストレート・リイシューだが、これは2009年のOfficial Release Seriesでのリマスターそのまま。ケースのスパインに「ORS 04」とあるのも同じ。
音楽そのものについてはいまさらなのですが、まあタイトにつくられていますね。ここでバックを務めるストレイ・ゲイターズが、ニール・ヤングが従えたバンド史上もっとも演奏のうまいメンバーかも。あまりに良すぎて長い期間は維持できなかったわけですが。
ディスク2は昔からお馴染みのBBCライヴ。しかし考えてみると、これ1971年の2月の録音なわけで。アルバムがリリースされる1年前に新曲をばんばん演っていたわけか。そりゃあ、観客もおとなしいわ。
そして、ディスク3はアルバム・アウトテイク3曲。内容はいいのですが少ないですなあ。BBCも30分ほどしかないわけだし、これだけ別にするのは、ううん。
で、DVDの方。「Harvest Time」という、全編が当時の映像からなるアルバム制作のドキュメンタリー、これこそがこのパッケージの目玉であります。
ストレイ・ゲイターズとのセッション風景が結構な尺で収められていて、ちょっと興奮。また、クロスビー・スティルズ&ナッシュらとのハーモニー・レコーディングも見応えがあります。
過去に見たことのある映像も混じっていますが、二時間たっぷりあるので問題はない。正直、冗長なところはあるのですが、よくぞあれもこれも入れてくれた、という感じです。
もうひとつのDVDはBBCライヴの映像版。これは10年かそこらくらい前に英国で再放送されていて、そのデジタルコピーで画質がいいやつも出回ったので、さほど感激はないですが、オフィシャルで出たということに意義はある。
しかし、このディスクの初期版は音声に不具合があって、でかいところが歪んでいるのだ。新たに製造したやつは音が直っているそうで、現在はオフィシャルで交換を受け付けています(わたしも手配中です*1)。
最初のほうで書いたように50周年記念盤として音源の量的にはちょっと物足りない。これを補うには2019年に出た「Tuscaloosa」も併せて聴くといいか。正真正銘、ケニー・バトリー入りストレイ・ゲイターズを率いた、1973年のライヴ盤ね。
ライヴであっても、めっちゃ安定している演奏はさすがであります。他ならぬアラバマの地で “Alabama” を演っているのも凄い。スタッフはひやひやしたかも。
あと、ニール・ヤングは「ジャック・ニッチー」と呼んでいる気がするな。
(追記)
*1: 到着しました。オフィシャルで手続きをしてから一週間後に発送通知があり、そこからエアメールでうちまで約十日と、まずまず悪くない対応ではないか。
2023-03-21
The Land Of Sensations & Delights: The Psych Pop Sounds Of White Whale Records 1965-1970
2020年に米Craft Recordingsより出たホワイト・ホエールもの。Craft RecordingsというのはConcord傘下のリイシュー・レーベルで、現在はVarèse Sarabandeの親レーベルでもあるよう。
編纂に当たったのはアンドルー・サンドヴァルで、マスタリング担当はダン・ハーシュ。1人(1グループ)1曲という縛りを設けているようなのが、以前取り上げた同種のコンピレイションと違うところ。全26曲中、Varèse Sarabandeの「Happy Together」とは2曲が重複、Rev-Olaの「In The Garden」とは7曲、「Out Of Nowhere」とは5曲の重複があります。トータルだと半数以上になるか。しかし、それ以外の曲にはこの盤しか再発がないものも多いです。
副題に「サイケ・ポップ・サウンズ」と付けられているように、選曲からは(タートルズのものを除外した上で)生きのいいローカルなガレージ・ロックから手の込んだサイケ・ポップまで広く採られている一方、落ち着いたテイストのミドル・オブ・ザ・ロード的なポップスは外されています。
その中で、ちょっと毛色の違うのがクリス・ジェンセンによるホリーズのカバー “I Can’t Get Nowhere With You”。制作はスナッフ・ギャレットとリオン・ラッセルのチームで、ゲイリー・ルイス&プレイボーイズと共通するようなキャッチーなティーンエイジ・ポップに仕上がっていて、これはこれで悪くない。
1960年代後半におけるLAポップの流行をオブスキュアなシングル盤で表現しながら、一枚全体の流れが弛みなく構成されているのが美点であって、このあたりがアンドルー・サンドヴァルのセンスですね。一見さんはタートルズも入った「Happy Together」、ポップス寄りの好みなら「In The Garden」の方がいいかもしれませんが、両者とも既に入手が容易ではなくなりつつあるのが困ったところ。
ところで、この盤にはひとつミスがあって。24曲目にはバスター・ブラウンというグループの “The Proud One” が収録されているはずが、ジョニー・シンバルの書いた “Sell Your Soul” が入っているのですね。とてもいい出来なのだけれど、いったいこの “Sell Your Soul” が誰のヴァージョンで、どこから紛れ込んだのかがわからない。
2023-03-11
Out Of Nowhere: The White Whale Story Volume 2
2004年に出た、Rev-Olaによるホワイト・ホエールのコンピレイションの続編。ボリューム1の「In The Garden」がソフトサウンディングなポップスを中心にして編まれていたのに対して、こちらはガレージ・サイケな味付けのものが多くなっております。そういう曲の中だとクリークの “Superman” がよく知られているかな。後にREMがカバーした曲です。
シングル1、2枚しか出していないグループがさらに多くなり、レアリティという点での価値のあるコンピレイションだが、「In The Garden」の落穂拾いという感もありますね。
で、こちらの方で一番いいと思ったのはドビー・グレイ。ケニー・ノーラン作の ”Honey, You Can't Take It Back” はゲイリー・ゼクリーがプロデュースした軽快なポップ・ソウル。トニー・マコウリィ辺りを思わせる出来です。もう一曲の ”What A Way To Go” も都会的で洒落たミディアムに仕上がっています。
クリスマス・スピリットというのはシングルを一枚だけ作った即席グループで、タートルズのマーク・ヴォルマンとハワード・ケイラン(後のフロー&エディですな)、モダーン・フォーク・クァルテットのサイラス・フライヤーとヘンリー・ディルツ、バーズのジーン・パーソンズとグラム・パーソンズ、それにリンダ・ロンスタットらからなる(らしい)。面子を聞くと、ちょっとしたスーパー・グループではあるが、それらの名前はクレジットされているわけではなく、全員がシングルの両面に参加しているわけでもなさそう。プロデュースはMFQとタートルズ両方に関わりのあるチップ・ダグラス。
A面に当たる “Christmas Is My Time Of Year” は後期タートルズの演奏にゲスト・シンガーが入っている、という風な曲で、実際にタートルズのシングル集にも収録されている。
もう一方の“Will You Still Believe In Me” はストーン・ポニーズにいたボブ・キンメルの書いた曲。チップ・ダグラスとリンダ・ロンスタットによるデュエットで、タートルズ組は参加していないそうだ。“Will You Still~” の方はこの盤でしか聴けないのかな。
2023-03-08
In The Garden: The White Whale Story
2003年、英Rev-Olaより出されたホワイト・ホエールのコンピレイション。
編纂に携わったのは後に同じCherry Red傘下でNow Soundsを立ち上げ、サンシャイン・ポップのいいのをばんばんリイシューするスティーヴ・スタンリーで、選曲も彼の個性が感じられるもの。タートルズの曲をあえて外した上で、ポップな曲を選りすぐったものになっていて、前回に取り上げた「Happy Together (The Very Best Of White Whale Records)」との重複はわずか一曲にとどまっています。
まあ売れはしなかったものの良い曲が目白押しですな。
クリークの "Soul Mates" はのちにパレードを結成するスモーキー・ロバーズ作。内省的かつ華やかで、とても好み。コーラス部分の展開など、なるほどパレードそのものだ。
また、トリステ・ジャネロもここでは落ち着いていて都会的なものが選ばれています。とくにこの盤のタイトルにもなっている "In The Garden" はセルメン・フォロワーの影も形もないクールなアンビエンスのもので恰好いい。
そしてニノ&エイプリルの、デヴィッド・ゲイツ作 "You'll Be Needing Me Baby" と、これもメロウ極まりない選曲。
もっとも、この辺りは単体でのリイシューもされているし、良くて当然、といえなくもない。
シングル・オンリーのもので目に付くものを挙げると、ライム&サイベルはウォーレン・ジヴォンがいたデュオだが、ジヴォンが首にされたあと別のソングライターが “ライム” となって出したシングルは両面ともカート・ベッチャーのプロデュース。いかにも彼らしいハーモニー・アレンジが聴けます。オールドタイミーな曲調の "Write If You Get Work" が気に入りました。
更に良いのがコミッティという、アル・キャプスとセッション・シンガーのスタン・フェイバーによるスタジオ・プロダクトによる "If It Weren't For You"。これは「Happy Together~」に入っていた "California My Way" のB面曲で、シングルとしてはラジオでA面の方をかけさせるために、わざわざ逆回転にして収録されていたという代物(タイトルも "You For Weren't It If" と、さかさにされていた)。ここではもちろん、正常なかたちで聴けるわけですが、いやいや、なんて勿体無いことをしていたのか、と思うくらいのグレイト・サンシャイン・ポップ。ソルト・ウォーター・タフィーあたりが好きなひとは気に入るのではないかな。作曲はホワイト・ホエールのスタッフ・ライターであり、自分たち名義のシングルも出しているダルトン&モントゴメリー。
他にも聴きものとして、ニコルズ&ウィリアムズ作の "Do You Really Have A Heart" と "We've Only Just Begun"、それぞれ最初期の録音があります。"Do You Really~" を歌ったのはのちに "Drift Away" をヒットさせるドビー・グレイ。"We've Only Just Begun" はスモーキー・ロバーズが歌い、自らプロデュースしたもの。どちらもメロディを尊重し、暖かみのあるつくりで、よろしくてよ。
2023-03-07
Happy Together: The Very Best Of White Whale Records
わたしの所有するホワイト・ホエールのコンピレイションのうち、一番古いものがこれで、米Varèse Sarabandeより1999年に出されたもの。
マスタリングはダン・ハーシュ、ビル・イングロットらが担当。収録された全21曲中、20曲がモノラルというのもいいですな。シングル曲を中心に編纂されたというか、そもそもシングル・レコードしか出していないひとも多いようだ。
ホワイト・ホエールというのはタートルズを売り出すために作られた会社で、他にヒット・レコードをコンスタントに出せるタレントを確保できなかったため、タートルズのキャリアとともに閉められた、と考えていいでしょう。その活動期間は1965~71年となります。
この盤でもタートルズは “It Ain't Me Babe”、”Happy Together”、“Elenore” が入っていて、まあ手堅い選曲ですな。
タートルズ以外の曲はフォーク・ロックを軸にしつつ、ソフトサウンディングなものからガレージィなロックンロールまで満遍なく、という感じ。知られたところではニノ&エイプリル、リズ・ダモンズ・オリエント・エクスプレス、ゲイリー・ゼクリーのブレインチャイルドであるクリークなんかがあって、このあたりはやはり聴いていて楽しいですが、おや、トリステ・ジャネロが入ってないのね。
ホワイト・ホエールは活動期間の後半になると、外部のプロダクションによる制作物を買い上げてリリースというものが多くなっていったようです。その辺りになるとサウンドの傾向がばらばらで、特有のセンス、カラーといったものが感じ取れないですね。このコンピレイションはレーベルの活動を一望できるようにちゃんと編集したせいで、かえって面白みが損なわれてしまっているのかもしれません。現在ではホワイト・ホエールの編集盤は他にも出されているので、これを無理して手に入れることはない、そう言いたいところだが。
オブスキュアなものでおそらく未だに他ではリイシューされていない曲が結構、含まれているのですよ。中でもコミッティという名のアル・キャプスらによるスタジオ・プロダクト、それによるフィフス・ディメンションのカバー “California My Way” が、ハーモニーが強調されたつくりで爽やか、なかなかいいです。
2023-01-28
Four Tops / Keeper Of The Castle
1972年、フォー・トップスがモータウンからダンヒルに移籍して一枚目のアルバム。
プロデュースはスティーヴ・バリー、デニス・ランバート、ブライアン・ポッター。ランバート&ポッターはダンヒルといえばこのひとたち、というポップソウルの職人ですな。アルバムの収録曲も半分はこのチームの作曲ですが、残りはフォー・トップスのベース・シンガーであるオービー・ベンスンを中心に作られたものになっています。
サウンドはいかにもLA録音らしい解放感漂うもので、タイトなリズムと華やかなアレンジのバランスも素晴らしい。アルバム冒頭のタイトル曲から躍動するリーヴァイ・スタッブスの声がよく映えるし、バックコーラスも聞き取りやすい。
そして続く "Ain't No Woman(Like The One I've Got)" が都会的でスウィートなミディアム。これがシングル・ヒットして新たなフォー・トップスを印象付けることに成功したのだな。わたしもアルバム中ではこの曲が一番好きです。
また、当時流行りのフィリー・マナーをなぞった曲がスロウの "Put A Little Love Away"、 オージェイズのようなミディアム "Love Music" とあるのだが、管弦のジャズっぽさが薄いからだろうか、本家よりも親しみやすいような感じで、これがランバート&ポッターのテイストなのだろう。
アレンジには曲によってデニス・ランバート、ジミー・ハスケルのほか、ギル・アスキーというジャズ畑のひとが入っていて、これがいい塩梅にバラエティに貢献しているよう。軽快でおしゃれな "The Good Lord Knows" や、小気味良くオルガンが引っ張っていくサンシャイン・ポップ "Love Makes You Human"、いずれもあまりソウル的ではない曲調だけれど、オーソドックスなナンバーの狭間で実に効果を発揮しています。
そして、このセンスがよりソウルらしい曲の中でうまく生きたのが "When Tonight Meets Tomorrow" という、ちょっと凝ったメロディをもつ曲。ニュー・ソウル味も感じる実に洒落た仕上がりで、軽やかでメロウなバックに緩急を利かせたリーヴァイ・スタッブスのボーカルがとても格好いい。
いい意味で大衆的で明るさがある、聴きどころの多いアルバムです。
2022-12-30
Astrud Gilberto / September 17, 1969
1969年、アストラッド・ジルベルトのVerveからは最後となったアルバムです、たぶん。日本で制作され日本語で歌ったアルバムが日本のヴァーヴからのみ発売されていて、そちらのほうがレコーディングは先であったが、もしやリリースは後かもしれません。
制作はニューヨーク。アレンジャーはアル・ゴーゴーニですから、ところどころジャズっぽい味付けはありますが、まあ品の良いポップス。ゴーゴーニはフォーキーなポップスを得意としたソングライターでセッション・ギタリストでもあったわけですが、ここではアレンジのみを担当しているようです。
取り上げているマテリアルは例によって英米の知られた曲のカヴァーが多いですが、特にオープナーであるシカゴの "Beginnings" が出色。この一曲によってアルバムが耳当たりの良いポップソング集にとどまらない、特別なものになっているように思います。
アレンジそのものはシカゴのオリジナルとそうは変わらないものの、パーカッションを入れリズムにラテン的なニュアンスを加えることで曲に切迫感が生まれています。さらに管がこちらのほうがずっと良い。きっちりとしたプロダクションの結果、爽やかかつ、スケールの大きな何かが始まるような雰囲気を持ち、とても恰好いい出来栄え。
アナログA面に当たる前半がややエッジを利かせたようなアレンジのものが多く、それに対して後半はもう少し落ち着いた感触の曲が並んでいて、アストラッド・ジルベルトの頼りない歌声との相性は後半の方が良いかと。中ではマーゴ・ガーヤンの "Think Of Rain" が個性がぴったりとはまった仕上がりのサンシャイン・ポップで、好みです。
基本、このひとの曲は歌手としては何の期待もせず聴くので、うまくいっているものがあると得したような気分になりますね。
2022-12-03
Roy Wood / Mustard
ロイ・ウッド、1975年リリースのセカンド・ソロ・アルバム。これもなんともいえないジャケットですな。
'70年代前半のロイ・ウッドはウィザードとしてのバンド活動もしていましたが、ソロ・アルバムの方は殆どの楽器を一人で演奏するワンマン・レコーディングで制作されています。で、ソロとしての一作目「Boulders」がパーソナルな面を感じさせるものであったのに対して、こちら「Mustard」はゴージャスで大きな編成の作りになっていて、バンドでの音楽との距離があまりなくなっているような感じがします。
アメリカン・ポップに対する愛情がわかりやすく示された曲が多く、アンドルーズ・シスターズ風のオープニング曲 “Mustard” からしてそれが顕著です。
続いての“Any Old Time Will Do” はメロディ、ハーモニー・アレンジともに'60年代初期ガール・グループを土台にしているよう。もっとも、サウンドは時代を反映していて、管楽器の響きなどいかにも抜けが良く、都会的なテイストもなくはない (オールディーズ・ポップの世界において「ガール・グループ」というタームは、1950年代終盤から'60年代初めにニューヨークで制作された黒人女性ボーカル・グループもの、という特定の音楽スタイルを指すのが一般的な用法ですかね。わたしはもうちょっと緩めに使っています)。
また、“Look Thru' The Eyes Of A Fool” はシャッフルに乗せたとてもキャッチーでこれもアメリカンなポップ・ソング。ようはフィル・スペクターなのですが、仕上がりはむしろラウドな大滝詠一という表現が近いか。
でもって、“Why Does Such A Pretty Girl Sing Those Sad Songs” は('70年代初頭くらいの)ビーチ・ボーイズへのオマージュである力作です。ベース・ボイスにはマイク・ラヴが降りてきているようだ。このアルバムでどれか一曲となったら、わたしはこれを選びます。
凝りに凝ったアレンジがいかにもしつこく、もう少しすっきり仕上げた方が良いと思わなくもないけれど、この重たさもロイ・ウッドの持ち味ではあるか。
ポップだけれど、くどい。けれど、やりたいことの多さがパワーとなっている音楽で、これこそがロイ・ウッドなのだな。
2022-09-17
Burt Bacharach / Casino Royale (50th Anniversary Edition)
スペインのQuartetというと古い映画の珍しいサウンドトラック盤リイシューで知られている会社ですが、ヨーロッパにあるサントラ専門のところの例に漏れず、カタログの殆どが枚数限定で、それに従うようにお値段も少し高めです。わたしのようなサントラ半可通が良さそうだな、でも高いなあ、なんて思っているうちに価格がどんどん上がっていく、もしくは入手不可にということはしばしばあります。
ただし、「Casino Royale」は色んなところから何度か出し直されてきたタイトルであり、Quartetにしては枚数を多めにプレスしたこともあってか、出されてから5年経った現在でもまだ普通に買えそうです。
「Casino Royale」のサントラを最初に再発したのはおそらく米Varese Sarabandeだと思う。わたしもそれで長いこと聴いていたのだが、これは音に歪みやドロップアウトがあって、あまり良いとはいえなかった。
さらに悪いことにVarese~では、そのデジタル・トランスファーの際にオリジナル・マスター・テープを損傷させてしまったらしい。そして、これより後年に他社から出たリイシューもこの傷物のマスターを使ってきました。
2012年になって、Quartetからこのアルバムの45周年2枚組CDが出ました。1枚目が映画で実際に使われたスコア(モノラル)を完全収録。2枚目がサントラ盤のリイシューで、このときはスペインで見つかったサブ・マスターが使用されました。
この盤も持っているのだけれど、コンプリート・スコアには疑似ステレオっぽいエコー処理がなされているのですね。肝心のサントラ盤のほうも分離がいまいち良くない感じがするし、ピーク部分になると音が潰れているようで、満足とまではいかなかった。
で、その五年後に再度Quartetから50周年盤として1枚ものが出たわけです(この時には権利者から2枚組にする許可が下りなかったそう)。オリジナル・サウンドトラックにフィルム・スコアからの抜粋、初CD化となるマイク・レッドウェイ "Have No Fear Bond Is Here" シングル・ヴァージョンで77分強まで詰め込まれています。
このリイシューの際には、良いソースを探し、吟味した結果、マスター・テープが損傷する以前に作られたデジタル・トランスファーのデータがあって、それが手に入るもので一番だったと。マスタリングは音圧控えめでダイナミック・レンジを尊重した丁寧な仕上がり。これなら安心して聴けます。
また、フィルム・スコアの方も、変な加工をせずナチュラルな響きのモノラルです。
バート・バカラックの音楽については今更、言うこともないか。最高。
ゴージャスで華やか、スケール感があっても決して重くならない、やっぱハリウッドってすげえなあ、と思ったら、これ、基本はロンドンでの制作なのですね。失礼だけれど、かの地にもえらい録音エンジニアがいたのね。あるいはフィル・ラモーンの力か。
2022-08-16
The Grass Roots / Where Were You When I Needed You/Let's Live For Today/Feelings/Lovin' Things
はじめに、名前が決められた。ローカル・バンドが名乗っているもので良いのがあったので、それを盗んだのだ。音楽のほうはヒッピーの間での流行りに当て込むことにした。
シングル・レコードが制作され、プロモーションのためにあるバンドがスカウトされた。最初のアルバムが出された頃には、そのバンドは既に逃げ出していた。穴を埋めるために別のバンドがリクルートされた。
今年になって、グラス・ルーツの最初の4枚のアルバムが2CDで英BGOよりリイシューされました。
使用されたマスター・テープについては記載されていませんが、実際の音の方はかなりいいです。彼らがダンヒルに残した作品のオリジナル・マスターも、2008年に起きたユニヴァーサルの火災によって焼失したようなので、英国で保管されていたコピー・マスターを使ったのでしょうか。
グラス・ルーツのファースト・アルバム「Where Were You When I Needed You」は1966年リリース。制作はP. F. スローン&スティーヴ・バリーで、カバー曲以外の作曲も全てスローン&バリーによるもの。
サウンドのほうはフィル・スローンのセンスがはっきり出た、きらきらしていて、ほんの少し湿度もあるフォーク・ロック。聴いていて気持ちがいい。スローンは収録曲の半分でボーカルもとっています。また、アップの曲ではサーフ/ホットロッド(ファンタスティック・バギーズだ)の名残りを残しているようで面白い。
翌年、シングル "Let's Live For Today" がトップ・テン・ヒットになったのを受け、メンバー総取っ換えで制作されたのが同名のセカンド「Let's Live For Today」。時代を反映したカラフルさのあるアルバムです。リズムが強調され、ハーモニーやコーラスが多用されることで、よりバンドらしくもなっています。今回のリイシューで一番好みなのは、このアルバムのA面部分になるかな。キャッチーで、かつ勢いがみなぎっている。
なお、収録曲にはメンバーの書いたオリジナルが4曲採用されていて、それらも手厚いアレンジが施されてはいるものの、いまひとつ印象は弱い。
1968年になるとP. F. スローンがダンヒルを離れてしまっていて、サード・アルバム「Feelings」からはスティーヴ・バリー単独によるプロデュースとなる。作曲でスローンが関わったものも3曲にとどまり、バンドのメンバーの手によるオリジナルが多くを占めるようになる。演奏も自分たちでやっている、らしい。
サウンド面ではロック色を強めたという印象で、サイケなものやヘビーな味付けも目につきます。"Hot Bright Lights" なんて曲はバッファロー・スプリングフィールドだね。
また、アレンジャーとしてジミー・ハスケルが加わり、その管弦によって全体の厚み、スケールは増しています。
しかし、いかに工夫しようとも楽曲そのものがあまりぱっとしませんな。
1969年の「Lovin’ Things」になると音楽性ががらりと変わり、ホーン・セクションが入ったポップ・ソウルに。バンド・メンバーのオリジナル曲は2曲のみとなり、演奏も再びスタジオ・ミュージシャンが大活躍。バンド・サウンドに縛られなくなったことで、ジミー・ハスケルのアレンジもより効果をあげています。
そして、同年にこのアルバムの路線で作られたシングル "Midnight Confession" が大当たりして、グループは息を吹き返すわけですな。
なおP. F. スローンの曲を取り上げているのはこのアルバムで最後となり(3曲)、わたしの興味もここまでとなります。この辺りは個人的な好みなのでいかんとも。「Lovin’ Things」で一番好きなのもスローンの書いた繊細さのあるポップ・ソング、"I Can't Help But Wonder, Elisabeth" であります。
BGOはグラス・ルーツのダンヒルでの残りのマテリアルも出す予定で、そこにアルバム未収録のものもまとめてくれるそうなので興味のあるひとはどうぞ。わたしは昔買ったコンピレイションで十分かな。
ところで、この文章を書くためにちょっと調べたのだが、4枚のアルバムでもグループ名の表記が “GRASSROOTS” と “GRASS ROOTS” で一定しない。途中で変わったのかと思ったのだが、そうではなくて行ったり来たりで、アルバム・カバーとレーベル表記でも統一されていない。元々、誰も思い入れがない名前だったのかもしれないが。
2022-07-23
The Rolling Stones / El Mocambo 1977
1977年の3月4~5日、カナダのトロントにあるエル・モカンボ・クラブで行われた公演を収めたライヴ盤。メインとなるのが5日のショウのフルセットで、その後にボーナス扱いで4日にのみ演奏された3曲が収録されています。
パーソネルはストーンズに加えてイアン・スチュワート、ビリー・プレストン、パーカッションのオリー・ブラウンがクレジット。
このときの演奏のうち4曲は、同年にリリースされた「Love You Live」のアナログC面に収録されていました。そちらでは “Little Red Rooster” が4日、残りは5日からのものでした。
「Love You Live」で聴けるそれらの曲のサウンドがかなりドライであったのに対して、今回のミックスでは現代的なリバーブが施されていて、アンビエンスというか印象がかなり違うものになっています。空間が広くなった感じ。この処理はボブ・クリアマウンテンのせいではなくて、ミック・ジャガーからの要望であったそう。
あと「Love You Live」だと “Mannish Boy” のコーラス部分で合いの手のようなスクリームが聞こえていましたが、あれはなくなってますな。
実際のライヴですが、これはいいストーンズ。前年までと比較して粘っこさがやや薄れ、性急さが戻ってきています。エレピとシンセ、バックコーラスに活躍するビリー・プレストンの存在は依然として大きいですが、翌年の「Some Girls」へと徐々にタイム感がシフト・チェンジしているということでしょうか。特にロン・ウッドが調子良さげである。
ヴィンテージなストーンズのライヴであり、施されているオーバーダブの数々もヴィンテージだ(たぶんね!)。恰好いいことに間違いはない。それだけにパッケージのデザインはもう少し何とかならなかったか。あと、新たなリリースについてはビル・ワイマンの写真はもう使わないことになっているのだろうか。まるで4人組のバンドのようだし、ステージ写真もうまい具合に端でカットされているのはなんとも。
2022-06-13
The Aerovons / A Little More
昨年に英国でリリースされていたエアロヴォンズの新作が、今年になって我が国でも流通するようになりました。名義こそグループですが、実質はトム・ハートマンのソロ・プロジェクトのようです。
サウンドの方はベースとドラムがいかにもアビー・ロード・スタジオ謹製だった前作と比較する(のもおかしいのだが)と、わりと普通に現代らしいバランスのギターポップになっています。
それでもレイト・シクスティーズ流儀のアレンジやイフェクトは楽しく、トーンを絞ったリード・ギターはまるでジョージ・ハリスンのよう。美しくもしつこいハーモニー・アレンジも好い。
楽曲の方はというと、これがメランコリックでいいメロディのものが揃っていて。リード・ボーカルとバック・コーラスのコール&レスポンスで構成されている部分も多いし、ミドル・エイトの利かせ方といい、はっきりと‘60年代ポップスらしさが感じられます。
"Me And My Bomb" は非常にマッカートニー的な節回しが楽しく、一方 "So Sorry" はホワイト・アルバム期のジョン・レノンへのオマージュのようでもある。また、タイトル曲の展開は「Abbey Road」を思わせます。
他ではビーチ・ボーイズを意識した "The Way Things Went Tonight"、ここで聴けるレンジの広いハーモニーはかなり真面目に寄せていて微笑ましい。
かと思えば、メロウなシンセ・ポップ "Shades Of Blue" は再結成後スタックリッジのジェイムズ・ワーレンのようだ。
そんな中でもオープナーである "Stopped!" が、甘さを漂わせた鍵盤とエッジの利いたギター、美麗に層をなすハーモニーがうまく溶け合って、全体の仕上がりとしては一番決まっているかな。
全部で8曲しか入っていないのでボリューム的には少ないのですが、その分、埋め草がなく聴きごたえのあるポップ・アルバムではないかと。
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