2014-12-31

The Kinks / The Anthology 1964-1971


キンクスのパイ・レコード在籍時のアンソロジー、予定より一月以上遅れて入手しました。
英国で最初に出回ったものにはマスタリングのミスで、ディスク3収録の "Two SIsters" 別ミックスに音飛びがあったそうなのだけど。チェックしてみたら、さすがにもう修正されていて、まずはひと安心。

パイ時代のアルバムに関してはここ数年のうちに、2タイトルを除いてデラックス・エディションとして出し直されている。しかし、今回のセットはさらなる新規リマスターで、音の感じはそう大きくは変わらないものの、やや高音が強めに仕上がっているように思う。


5枚組、140トラックのうち未発表とされているのが25曲(ディスク5にはひとつも入っていない)。聴いてみた感じ、別ミックスのうちいくつかは今回新規にマルチトラックから作られたもののようだ。
ただライナーノーツを読むと、当時のセッションテープは1970年代になってパイ・レコードによって廃棄されてしまっていて、そんなには残っていないらしい。
レアトラックを目当てにしていたら、ちょっと量的に物足りないかもしれない。けれど、この時期のキンクスの充実ぶりを一気に追体験していると、そんなことはあまり気にならなくなってしまう。

何人かのミュージシャンたちのコメントが記されているけれど、ピート・タウンゼンドが一番長い。
「Village Green Preservation Society」が俺の無人島レコードだ、なんて言ってます。

しかし、デビュー当時はすごく若々しいね。特にディスク1の頭10曲、ゆったりした曲調のものがひとつもなく、チンピラ臭いロックンロールが一気に畳み掛けてくる。ディスク2の半ばまで、長さが3分を越える曲がない、というのもまた気持ちがいい。
そして、ディスク4あたりを聴いていると、やっぱり「Village Green Preservation Society」も単体でリマスター盤を出して欲しくなるな。今回のセットでは「Something Else」収録曲はステレオミックスが採用されているのに、何故か次にリリースされた「Village Green~」からの曲はモノラルが殆どだ。はて?

2014-12-30

エラリイ・クイーン「災厄の町〔新訳版〕」


クイーン氏はまた深く息をついた。「だが、そんなことはだれにもわかるまい? これは実に奇妙な事件だったよ――人間関係も感情も出来事もひどくこみ入っていて、ぼくが出くわしたことのないものばかりだった」

さて、新訳版です。
えらく厚くなったような。字が大きいわけでもないのに500ページくらいある。
帯には「エラリイ・クイーンの最高傑作!」とあります。そうなのでしょう、きっと。

この『災厄の町』は今まで何度か読み返してきました。クイーンにとって大きなターニング・ポイントとなる作品であり、実際に面白いのですが、最初に読んだときには、ミステリとしては大したことないんじゃないか、と思いました。
エラリーを渦中に取り込むことで、事件を外側から見ることができなくさせてしまう、それによってこの作品は成立しているのだけれど。読者からすれば真相は簡単に見当が付く。そして、さすがにこのままでは終わらないだろう、と思って最後まで読み続けると、なんと、本当にそのまま終わってしまう。
ある程度の複雑さを犠牲にしたことで、小説としての力強さが生まれているのだとは思いますが。若いひとが「よし、犯人を当ててやろう」と意気込んで読んだとしたら、がっかりするんじゃないかな。

全体の構成はとても優れているのです。犯人の設定は過去に使ったものの再使用なものの、物語の上ではずっと大きな効果を挙げている。また、投函されていない手紙、というアイディアの独創性は見事というしかない。
一方で、クリスティ風のダブルミーニングも使われていますが、これはちょっと硬いかな。

既にエラリー・クイーンのファンになっている人間にとっては、とても読み応えのある作品ではあります。
なお、早川からは夏に『九尾の猫』の新訳が出るそうです。先に『十日間の不思議』を読んどいたほうがいいんだけどな。

2014-12-29

Billy Butler & Infinity / Hung Up On You


ジェリー・バトラーの弟であるビリー、1973年に彼がグループを率いてMGM傘下のPrideというレーベルから出したアルバムが初CD化されました。ボーナストラックも3曲追加。
あまり聞いたことのないFever Dreamというところからのリイシューでして。ブックレットはペラ紙一枚で、作曲者はおろか、音源の権利クレジットすら記載されていません。肝心のマスタリングはというと、音圧がちょっと高すぎるものの、ちゃんとしたクリアな音ではあります。

さて、アルバムの方ですが。冒頭からスロウ2連発、これですっかりやられてしまう。
"I'm So Hung Up On You" は唯一ファルセットでリードを取る曲。落ち着いた歌い出しから一転、サビでの盛り上がりが素晴らしい正調スウィート・ソウルだ。それだけにあっさりとフェイドアウトしてしまうのが物足りなく、繰り返して聴きたくなる。
続いての "I Don't Want To Lose You" は陰影を湛えたメロディが、ややハスキーで優しげなテナーで歌われる。いかにもシカゴらしい乾いたドラムの音も甘いサウンドを引き締めているようで、好みです。

このアタマ2曲のスロウが抜きん出て良いのですが、残りはミディアムテンポのものが多め。全体に曲の粒が揃っていて、快調なシカゴ・ソウルが楽しめます。特に "Whatever's Fair" というミディアムが、抑制を効かせた中で泣きの入ったメロディが印象的で、気に入りました。収録曲のうち、この "Whatever's Fair" と先に挙げた "I Don't Want To Lose You" を含めた4曲をジェリー・バトラーも取り上げているのだけれど、こちらビリー版のほうが全体にテンポが早めで若々しいつくりになっています。
なお、アレンジャーを務めているジェリー・ロングはモータウンのスタッフだったひとのよう。"Storm" というミディアムはフォー・トップスを思わせるところがあるし、ファンクの "Free Yourself" なんてちょっとテンプス風です。

ボーナストラックはアルバム以前、'69、'70年のシングル曲。アルバム収録曲よりすっきりとしたサウンドで、中では張りのあるテナーが映える "Keep It To Yourself" の爽やかな仕上がりがいいな。

バックコーラスには女声が目立つ曲もあって、果たしてボーカルグループとしての実態はどのくらいあったのでしょうか。まあ、そんなことはどうでもいいくらい充実した内容の一枚でありますよ。

2014-12-28

アガサ・クリスティー「バグダッドの秘密」


1951年発表になるノンシリーズ長編。中東、イラクの首都を舞台にした冒険スリラーです。
クリスティのスリラー作品ではお馴染み、若くて元気のいいお嬢さん、この作品ではヴィクトリアが国際的な謀略に巻き込まれていく、というお話。

軽薄さが仇をなして失業中のヴィクトリアは一目ぼれした相手の青年、エドワードを追ってバクダッドへ行きたいのですが先立つものがない。なんとかお金を使わずに行く方法がないかと知恵を絞ります。それと平行して命を狙われている人物や、ロンドンで活動するスパイなどがカットバック風に描かれていき、全体図をなかなか見せない。このあたりの期待感はなかなか。
作品の原題が "They Came to Baghdad" とあるのだけれど、中心になる登場人物たちがバグダッドに集まっていくことで、ばらばらに語られてきた要素が次第に結びついていきます。
物語の中盤に至って、ヴィクトリアがエドワードとようやく再会してからはクリスティ自身のトミーとタペンスものを思わせるところもあるのだが。

プロットがご都合主義全開なのは女史のスリラーではいつものこと。ただ、謎解きの面からしてもやや難ありかな。誰が悪事の首謀者であるかは割合に早い段階に見当が付く。その上での驚きも用意されてはいますが、ちょっと枝葉感が。

構えずに気楽に読むのが吉。要所要所のヒキは強い、ドキドキハラハラ編でございました。

2014-12-25

The Velvet Underground & Nico / The Velvet Underground & Nico (eponymous title)


ヴェルヴェッツというとモノクロームなイメージがあるんだけど、1967年にリリースされたこのデビュー盤はカラフル。なんといっても "All Tomorrow's Parties" がサイケデリック満艦飾で、しかも熱をはらんだ演奏が絶品。これと "Venus In Furs" ではオストリッチ・ギターとやらのドローン効果もあるのでしょうが、こういう作りこんだ曲があるからこそ、ほかは割りと好き勝手やれているのだと思います。
もちろん "I'm Waiting for the Man" はめちゃくちゃ格好いい。古典的ともいえる構成でありながら、これ以前になかったタイプの新しいロックンロール。


インプロヴの要素が強い曲には退屈に思える面もある。けれど "Heroin" になるとそれが曲の中でエネルギーの高まりを感じさせて、すごく効果を上げている。まさにジョン・ケイルの才気が爆発、といった感じであります。
また、"Sunday Morning" におけるベースギターの嵌ってなさ加減はちょっとしたものだ。しかし、曲全体のサウンド処理がわけのわからないことになっているので、聞き流してしまうのね。

あと、"There She Goes Again" のリフは勿論 "Hitchhike" なんだけど、それ以上にボーカルがボブ・ディラン。"Run Run Run" や "The Black Angel's Death Song" にもそういう面はあるけれど、"There She Goes Again" は本当にディラン丸かじりなのが面白いな。

つたない部分もあるのだけれど、長年聴いていると、もう、そこはどうでもよくなってきた。とてつもない個性のきらめきを感じさせてくれる、やっぱり唯一無二のアルバムですな。

2014-12-07

Procol Harum / Shine On Brightly


マシュー・フィッシャー在籍時のプロコル・ハルムはどれもいいんだけれど。曲だと "Homburg" が一番好きで、アルバム単位でいくとセカンド「Shine On Brightly」(1968年)かな。

冒頭の "Quite Rightly So" からして太いメロディで、堂々とした風格を感じさせます。演奏の主役はオルガンとドラムなんだけれど、ちょっとしたピアノのフレーズも効いている。
そして、続くタイトルトラック "Shine On Brightly" がとてもいい。イントロのフレーズは単純極まりない、けれどある種のエネルギーを放射しているような鮮やかさ。米盤ジャケットデザインを思わせるイマジネイティヴなサウンドで、メロディもキャッチーだし、これが個人的にはベスト。
このアタマ二曲が抜きん出ていいのだけれど、他のものも渋めの佳曲が揃っている。サイケデリックの要素がサウンドにカラフルさを付け加えていて、それといかにも英国らしいメランコリックな味わいが組み合わさることで、独特の浮遊感が生まれているように思うな。

そして、アルバム後半には組曲 "In Held 'Twas In I" があって。単体ではいまひとつものにならない曲をまとめた、という面はありますし、個人的にも大げさなアレンジは苦手です。にもかかわらず、それが聴けるものとして構成されているのはグリン・ジョンズの貢献もありますが、メンバーそれぞれのプレイヤーとしての力量によるところが大きいかと。特にB・J・ウィルソンというドラマー、そのプレイはパワフルでありながら繊細。曲調に合わせさまざまな表情を見せてくれます。
小パートとしても "'Twas Teatime at the Circus" からは、ちょっとスモール・フェイシズの「Ogden's Nut Gone Flake」に似たようなユーモアを感じます。また、マシュー・フィッシャーが唯一作曲し、ボーカルも取った "In the Autumn of My Madness" は組曲全体の重いサウンドの流れの中でうまく作用しているようだ。

R&Bとクラシック音楽、さらにはサイケデリックという要素が並列されるのではなく、有機的に絡み合っているというのは、ちょっとない個性ではないかしら。この時代にしか起き得なかった化学反応、なんてことを考えてしまいました。

2014-12-01

Bo Street Runners / Never Say Goodbye: The Complete Recordings 1964-1966


ロンドンのR&Bコンボ、ボー・ストリート・ランナーズのコンプリート盤が英RPMから出ました。ライナーノーツにはオフィシャルなものとしては初CD化だ、と書かれております。
コンプリート、といってもアルバムを残していないグループなので、そんなに分量はないのですが、今回は新たな発掘音源も2曲収録されていますよ。

最初に収められている4曲は1964年に自主制作されたEPから。演っているのはブルースのカバーなんだけど、唯一オリジナルの "Bo Street Runner" はボー・ディドリー調でこれが格好いい。スタイルとしては実にオーソドックスな英国R&Bなんですが、ライヴの勢いをそのまま持ち込んだであろう気合の入った演奏です。この時代にしてはカラフルな鍵盤も印象的。ボーカルは今聴くとちょっとロカビリーっぽいか。
彼らはTVショウ「Ready, Steady, Go!」のアマチュア・コンテストで勝ちあがり、デッカとのレコード契約を獲得すると、グリン・ジョンズの元でシングルを制作。"Bo Street Runner" をリズムを強調したアレンジで再録しています。流石にまとまりのいい仕上がりですが、個人的にはEPヴァージョンのほうが活きがいいように思うな。残念ながらこれが大して売れなかったため、デッカは契約をEMI傘下のコロンビアに売り渡してしまいます。


翌'65年になると、ミッキー・モストがプロデューサーに就いて次のシングルが制作されます。両面ともジェイムズ・ブラウンのカバーで、これ以前に比べて演奏が格段にシャープになっていますが、それ以上にボーカルがワイルドなものに変化。力強くてダンサブルな仕上がりです。実際のレコーディングではセッション・ミュージシャンが参加していて、バンドのメンバーたちは不満であったそうなのだが、何度聴いてみてもこの2曲が一番良いんだから仕方がない。
彼らはこの後に2枚のシングルを出していて、そこではキャッチーなメロディの曲を取り上げたり、ビートルズの "Drive My Car" を演ってみたりしています。悪くはないのですが、逆に個性が弱くなっているかなという気も。
また本盤には、バンド末期のシンガーであったマイク・パトゥが解散後に出したソロ・シングル曲もあって、(少なくともその片面で)バックを務めているのもボー・ストリート・ランナーズだそう。明るくポップなこれらはもう別物という感じなんだけれど、出来はいい。ちょっとジョージィ・フェイムっぽいところもあるかな。
そして、最後には「radio version」としてスタジオライヴらしき2曲が入っています。音質は良好、迫力も充分でこれには満足。

どう考えてもニッチな層に向けてのリイシューですが、デビュー当時のストーンズや、あるいはアートウッズのようなモッドR&Bなんて呼ばれているものが好きなひとにはいいんではないすかね。

2014-11-30

ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ「赤い右手」


際物だと思っていたので今まで読まずにきた作品ですが、文庫化ということで手を出してみました。1945年の作品ということですね。エラリー・クイーンだと『フォックス家の殺人』の時代だ。

中心となるのは異様な外見を持つヒッチハイカーによる強盗殺人である。
事件についてはある登場人物の一人称により、何度も時系列を行ったり来たりしながら断片的に語られていくのだが、その語りが何かしらおかしい。信頼できない語り手であるというだけではなく、明らかに神の視点が混じっている。また、思わせぶりな描写が凄く多くて、そのどれもが伏線に見えてしまい、いちいち引っかかる。
一体どういう風に決着はつくのか、見当がつかないまま、熱を感じさせる文章によってぐいぐい読まされていきます。

ミステリとしては相当無茶なつくりだ。充分に手掛かりが用意されているとはいえ、それを作品全体を覆う混沌とした雰囲気が隠してしまっている。
あと、誤導がえげつないな。いくらなんでもそれはないだろう、というような。

うん、なんていうか、すれっからしの読者向けでしょうね。
懐かしの新本格みたいで面白かった、それも抜群に。

2014-11-24

アガサ・クリスティー「愛の探偵たち」


しかし、凄いタイトルだな。いい歳のおっさんとしては、こっ恥ずかしい。
オムニバス短編集で、1948年のノンシリーズ中編「三匹の盲目のねずみ」と七つの短編を収録。


「三匹の盲目のねずみ」 元々はラジオドラマとして書かれたものを小説化した作品だそう。そのせいか内面描写は控えめで、テンポ良く進んでいく。雪に閉ざされた山荘が舞台で、かつマザー・グースものですが、舞台設定やキャラクターには時代に合わせたアレンジが感じられます。ミステリとしては雰囲気の醸成がうまいのだけれど、伏線は少なめ。わかりやすいツイストを伴ったスリラー、というところでしょうか。

続いて、'40年代前半に発表されたジェーン・マープルもの。
「奇妙な冗談」 ストランド誌に発表したものとしては最後の短編だそう。財産の変わった隠し方、いってみればそれだけなんですが。お話のもって行き方はいかにも手馴れている。
「昔ながらの殺人事件」 オーソドックスなフーダニットなのだけれど、どうもこの作品ではそこに主眼はないような気もする。というのも、原題がそのまま真相を示しているのだ。解決編で浮かび上がってくる犯行シーンは印象的なものであって、そこを書きたかったのでは。
「申し分のないメイド」 ちょっとシャーロック・ホームズ譚を思わせる(タイトルもそうかな)、手の込んだ犯罪。気の利いた誤導があるのだけれど、それほど効果が上がっていないようでもある。それにしてもマープルは勘が良すぎ。
「管理人事件」 作中作による犯人当て、という趣向。でも、それだけかも。手掛かりも弱い。
四作とも凄く読みやすいし、そこそこは面白いんですが、謎解きの興趣はやや薄め。

次は'20年代後半に発表されたエルキュール・ポアロものがふたつ。
「四階のフラット」 導入が魅力的。細かい伏線もあって、読み終えてみればしっかり計算された作品だということがわかります。
「ジョニー・ウェイバリーの冒険」 予告状を何度も出した上での誘拐。意外な犯罪計画が楽しいし、ヘイスティングズも出てきます。
どちらの作品も第一短編集『ポアロ登場』に収められたものと比べると出来が良いですね。

最後は'26年に発表されたハーリ・クィンものです。
「愛の探偵たち」 この作品の設定は後のある長編でも使われていますね。クィンものとしてはファンタスティックな味はあまりない、手堅いミステリになっています。
並べて読むと、短編として一番まとまりがいいのがこれかな。


全体にひどいものはないけれど、突出したものもない、という感じの一冊でした。
ただ、短編集『火曜クラブ』を除くとマープルが登場する短編というのは七つしかないので、そのうち四作が読めるのは貴重かと。
いずれにしてもファン向けでしょうか。

2014-11-17

麻耶雄嵩「化石少女」


私立ペルム学園の二年生、神舞まりあは二人しかいない古生物部の部長だ。普段は山奥から掘り出してきた化石を弄り回している彼女は、学園内では変人として知られている。そんなまりあが何故か探偵役となって推理を開陳していく連作短編集。


良家の子女が多く集うというペルム学園には独特というか妙な気風があって、まりあのキャラクターも強烈。そういったちょっと浮世離れしたような設定に、全体に明るく軽いタッチでお話は進んでいきますが、ミステリとしてはこの作者らしいガチガチの本格であります。

その、まりあの推理というのは、一見すると普通の事件に手の込んだトリックが使われた可能性を見出していくというもの。仮に犯人は捕まっていても、それとは別の真相があると主張するわけ。
ただし、普通のミステリならまりあの超絶推理で事件は解決、というところなのですが、古生物部唯一の後輩である桑島彰がそれを否定、まりあをこてんぱんにして終了、という展開が繰り返されます。なんと、それぞれの短編が終わった時点では、まだ事件は解決していないのです。
また、彰がまりあの推理を批判する際、その穴や齟齬を指摘するより、むしろ現実性や蓋然性の低さを突いてくるわけであって。この辺り、やたらにトリッキーなミステリを描いた上で、それを小馬鹿にしているようでもあるかな。

そして六つの事件が終わり、エピローグに入ると、隠されていた事実が明かされます。これまでにも使われたことがあるような趣向なのでさほどの衝撃ではないのですが、その分、今回はとてもスマートな仕上がり。

麻耶雄嵩にしてはそれほど捻じれてもいないし底意地が悪くもありませんが、それでも推理の妙は堪能できるし、充分に変な作品でありました。
あと、読み進めていくうちに気付いたのは、すべてのトリックがあるひとつの原理のバリエーションからなっている、ということ。これは何気に凄いことでは。

2014-11-15

George Harrison / Dark Horse


「Dark Horse」(1974年)のリマスター盤、日米アマゾンのカスタマー・レヴューではあまり評判がよろしくないようだ。実際に古いCDの方がいいのだろうか。ちょっと聴き比べてみたのだけれど、なるほど旧盤のほうがクリアで、分離が良いですね。
今回のアップル・ボックス、全般に中低域がしっかりと出ているようであって。「Dark Horse」でもドラムの迫力は向上している。ただしその分、上ものがやや引っ込んだ印象かな。
にもかかわらず、個人的にはリマスター盤のほうが落ち着いて聴けるんだよなあ。どっちのマスタリングが良い・悪いの話ではなくて、好みの問題なんだけれど。比較すると旧盤はひとつひとつの音が軽い気がするのね。


この「Dark Horse」というアルバムは、飛び抜けたような曲はないものの、逆につまらないものも見当たらず、全体に結構いい曲が揃っている、という感じがします。
サウンド面ではソウル色がぐっと強くなっていて。それに最も貢献しているのはトム・スコットによるホーン・アレンジ。また、4曲で参加しているビリー・プレストンの鍵盤も印象的であります。

よく言われるように、ジョージの歌声が荒れているのは確かで。シングルになった "Ding Dong, Ding Dong" なんか、明らかにきらびやかなサウンドとは合っていない。また、"Simply Shady" や "Bye Bye, Love" ではキーの高いボーカルが線が細いを通り越し、なんだかケロケロしていて、もしかしてテープスピードを操作してピッチを上げているんじゃないかしら。"Simply Shady" などエディ・ヒントンあたりに合いそうな南部風の佳曲なんだけれど。
しかし、逆にそのしゃがれた声がロック的な荒々しさに結びついていて、格好良く感じられる瞬間もあります。タイトル曲なんかちょっとボブ・ディランっぽいじゃありませんか。

ロニー・ウッドとの共作である "Far East Man" が一番出来がいい、と書いてしまうと、他のジョージがひとりで作った曲はどうなるんだ、という気もしますが。都会的なソウル色とさわやかな雰囲気がなんとも、たまらないですな。

2014-11-04

有栖川有栖「怪しい店」


作家アリスものの新刊は、さまざまな店をテーマにした五作品を収めた短編集。すべてが今年発表された作品なので、短編集だけれど本当に最新という感じ。
装丁がいいですね。背表紙や見返しにも薄く模様があって、細やかさが感じられる仕事です。


「古物の魔」 骨董店を舞台にしたフーダニット。90ページほどあって、これが一番長い。
事件そのものは地味で、いかにも取っ掛かりがないように見えるのだが、不可解な点を洗い出し、そこから意外な動機を浮かび上がらせる手際はいつもながら巧い。誤導や伏線も実に大胆だ。

「燈火堂の奇禍」 古書店の主人が頭を打って意識不明になったのだが、実際には何が起こっていたのか。些細な手掛かりから想像を広げていく小品。古書店というシチュエーションが絶妙ですな。

「ショーウィンドウを砕く」 倒叙もの。あえて策を弄さずに行われた犯罪だが、意表をついた手掛かりと、細かな伏線が綺麗に収まっていく解決がお見事。

「潮騒理髪店」 いい題名だ。題名が良い小説は中身も良いに決まっている。旅先で火村准教授が出会った謎と、ありえたかもしれない解答。
光景の持つ意味、その変化が鮮やかなのだけれど、あえて読者が先に気付けるように書かれているのも、小説としてのかたちの良さを優先させたからでは。

「怪しい店」 他人の悩みを聞く「聴き屋」、その女主人が殺される。これは80ページ近くあって、捜査が進むうちに被害者の人間性が見えてくる過程が読ませる。
謎解きのほうは、小さな矛盾からある前提をひっくり返すというもので、実に正統派なロジックが楽しめます。


昨年に出た同シリーズの『菩提樹荘の殺人』が全体的に緩いような気がしたので、読む前はどうだろうかと思っていたのだけれど。今回は無駄なところが少なく、締まった仕上がりの作品が揃っています。「店」というテーマを設けながら、ミステリとしてのバラエティも感じられるのも良いですな。
派手な趣向こそありませんが、丁寧でしっかりと作られた短編集でした。

2014-11-02

フラン・オブライエン「スウィム・トゥー・バーズにて」


「申し分なき小説は紛うかたなき紛い物でなくてはならず、読者は随意にほどほどの信頼をそれに寄せればよいのである」
伯父のすねをかじりながら、ほとんどの時間をベッドの中で過ごしている、大学生の「ぼく」。彼が執筆している物語、その登場人物のトレリスもまた小説家であり、自分の創作した人物たちを自分と同じホテルに住まわせ、その行動を監視していた。だが、トレリスの作中人物たちはやがて、作者の支配から逃れようとして・・・・・・。

1939年発表作。章立てというものがなく、のらくらとした大学生の日常と、彼の手による創作物、さらにはその中で語られる虚構、これらが一見すると脈絡ない具合に並列して進んでいきます。そして、その作中作部分では、饒舌で熱を帯びた語りがこちらをぐいぐいと引っ張っていく。アイルランドの英雄譚、カウボーイ、悪魔に妖精など多ジャンルにまたがった要素もただただ面白さに奉仕するために存在しているようだ。このお話がどこへ向かうのか、読み進めていても一向に見当がつかなくて、それにもわくわくさせられる。
一方で、作中現実での語り手である「ぼく」は、仲間内で益体もない会話に熱中しながら、家庭ではごくつぶしとして扱われる。妙にリアリティがある「ぼく」より作中作のキャラクターのほうがずっと生き生きとしていて、その対比もいとおかし。

メタフィクションの古典なのだろうけれど、そんな形式にはこれっぽっちもとらわれていないような出鱈目っぷりが素晴らしい。特に後半の展開は書きようによってはSFにもなりそうだ。
何ら教訓や深遠なる洞察もないし、結末もなんだかはっきりしない。しかし、そんなことは問題にならないほど、ほら話の愉しさに満ちた一冊でありました。

2014-10-28

XTC / Drums and Wires


「Drums and Wires」(1979年)のリイシュー、CD+ブルーレイ版を買いました。しかし、うちにはサラウンド環境は無いのだよ、うん。そうなるとハイレゾによる音質向上が目当て、ということになるんだけど。
CDにはアルバムとエクストラ・トラックを2014年ミックスで収録。ただし、オリジナル・マルチが無いという "Life Begins At The Hop" は元のままです。去年リイシューされた「Nonsuch」もそうだったのだけれど、これらのトラックは全てブルーレイにも入っているので、リッピングして聴く習慣の無い僕のような人間にとってCDのほうは要らないのだが。

それはともかく、実際に聴いて思ったのは、ごく当たり前のことで。音がいいな、やっぱりマルチ・テープから作り直せば効果は絶大なんだな、と。ブルーレイは勿論、CDのほうでもそんな感じがしましたよ。
特に低音がしっかり響いている感じであって。ベース、うまいね。骨太なドラムはときとして脅迫的ですらあり、既に「Black Sea」みたいだ。

あとはレア・トラックとしてデモやリハーサルが大量に入っています。
〈SAUCY PLATE SESSION〉 とある5曲、これはコリン・モールディング単独のデモでしょうか。公式には未発表の曲ばかり。
〈SWINDON TOWN HALL〉の二度に渡るセッションはデイヴ・グレゴリーのライナーノーツによればレコード会社向けのデモ。
〈TOOTS GARAGE〉はアルバムリリースより後に行われたセッション。これは割合に音がちゃんとしてます。コリンの "I Overheard" はこれも未発表か。
〈TUDOR BARN ALBUM REHEARSAL〉は地元スウィンドンでのアルバムリハーサルで、デイヴ・グレゴリーによればローディのスティーヴ・ウォーレンに頼んで録ってもらっていたカセットテープが見つかったそう。同じ曲を何度か繰り返しているので、20トラックもあります。"Scissor Man" の前にはビートルズの "From Me To You" のフレーズが聞こえます。

映像としてはプロモ・クリップが二本のみ。大したものではないですが、馬鹿馬鹿しかったりシアトリカルであったりで、今見ると意外に面白い。アンディとコリンを見ていると、なんだかチープ・トリックのリック・ニールセンとトム・ピーターソンを連想してしまった。


実は、「Drums and Wires」というアルバムを聴いたのはかなり久しぶりだったのだけれど、この頃はまだまだとんがっていますな。攻撃的でユーモラス。楽曲はキャッチーなものが増えてきているけれど、ウェットなところが感じられない。即物的な印象のアルバムタイトルは鍵盤奏者が脱退したことを受けているのだろうけれど、まさに太鼓と鉄線でできた音だ。
改めて聴いて "Roads Girdle The Globe" のギターリフはキャプテン・ビーフハートっぽいなあ、なんて思ってたら、なんだ、アンディのコメントにもそんな風なことが書いてるな。

2014-10-27

A・クリスティ/F・W・クロフツ 他「ザ・スクープ」


アガサ・クリスティのミステリ作品を月一で読んできているんだけれど、これはその流れで手を出してみました。本書にはディテクティション・クラブに所属する作家たちの手によるリレー小説「ザ・スクープ」(1931年)と「屏風のかげに」(1930年)が収められています。発表されたのは『漂う提督』より少し前ということになりますが、二作品とも元々はラジオドラマとして書かれたもので、実際の放送の際には作家たち本人がそれぞれ自分の書いた部分を朗読したそうです。

「ザ・スクープ」は140ページほどの中編で、殺人事件の謎を追っていた新聞記者が特種になるような証拠を入手したのだが、自らも事件に巻き込まれ・・・・・・といったお話。
参加しているのはクリスティの他、ドロシー・L・セイヤーズ、E・C・ベントリイ、アントニー・バークリイ、フリーマン・ウィリス・クロフツ、クレメンス・デーンという面々で男女半々。全12章からなり、それぞれが(連続しない)2章ずつを担当しています。
さて、リレー作品といってもこの「ザ・スクープ」では、事前に六人の作家たちが合議のかたちでプロットを考えたらしい。最初と最後の章を手がけているのがセイヤーズなので、彼女が仕切ったのでしょうか。特に最初のつかみの迫力は充分。
作品全体としてもまとまりが感じられる上、ラジオドラマらしく各章の終わりでは必ず意外な進展があって興味を引き付けられる。勿論、作家たちの書き振りにも個性が見られて面白い。クリスティは噂話が好きな婦人を描き、クロフツは警察官を中心に物語る、といった具合です。
程よく錯綜したプロット、次々と入れ替わる容疑者、サスペンスの要素もあって中盤くらいまでは面白い。しかし、残念なことに謎解きの方はややお粗末。トリックはしょぼいし、犯人の計画も穴だらけで、豪華執筆陣の顔ぶれからするとちょっと期待外れか。
読み終わってみれば、通俗スリラーという感じでした。

もうひとつの「屏風のかげに」は家庭内で起こった殺人を扱ったもの。80ページ足らずで、ヒュー・ウォルポール、クリスティ、セイヤーズ、バークリイ、ベントリイ、ロナルド・ノックスの順で書かれています。こちらでは最初の三人が相談無しに話をつないでいって、残りの三人が協議の上で完成させた、ということです。
各作家の遊びの部分が少ないのだけれど、その分、非常に緊張感あるフーダニットという仕上がり。小さな瑕疵はありますが、解決編もこのメンバーらしい捻りや奥行きがあって、こちらは面白かった。

まあ、そんな必死で探すような本ではないと思いますが、近々復刊されるという『漂う提督』が気に入って、なおかつ安値で転がっていたなら読んでみればいいのでは。

2014-10-26

Pugwash / A Rose In A Garden Of Weeds


パグウォッシュのコンピレーションが出ました。17曲入りです。副題には「A Preamble Through The History of Pugwash」とあって、パグウォッシュの歴史~その序章、てなところでしょうか。米Omnivoreからのリリースで、彼らの作品が北米市場で発売されるのはこれが初、ということらしい。
リマスターはされているものの、特に新曲や未発表のものはありません。以前にも「Giddy」というコンピレーションがありましたが、それとは7曲がダブり。もっとも彼らの過去のアルバムが全てそうであるように、「Giddy」も今では入手しにくくなっています。

選曲は十年以上のスパンがある彼らのキャリアから万遍なくされているのですが、殆ど違和感無く曲が並んでいて、作風の安定ぶりがわかります。ときにサイケデリックな味付けがあったりアコースティックな手触りであったりしつつも、大まかにはビートルズ、ビーチ・ボーイズ、ELO、XTCらからの多大な影響が現代的なギターポップに溶け込んだ音楽、その基本線には変化がありません。さらに、作品を重ねてきても手練れた感がなく、瑞々しさが感じられるのも良いすね。


このバンドの中心人物であるトーマス・ウォルシュというひと、シンガーとしては大して声域が無いんだけど、この狭いレンジでうまいことメロディを作るよなあ。
いや、全くもって良い曲揃いでありますね。

2014-10-25

Stackridge / The Man In The Bowler Hat


スタックリッジの三枚目は1974年リリース、プロデュースド・バイ・ジョージ・マーティン。ということで制作はAIRスタジオで行われ、エンジニアにはジェフ・エメリックの名も。
ジョージ・マーティンはストリングス・アレンジは勿論、ピアノでも参加。リハーサルをマーティン邸で行うこともあったということで、かなりな貢献度。

間違いなくスタックリッジのアルバムの中では最もポップな作品でしょう。まず、これ以前の作品と比較して音像がとてもシャープなものに変化しています。特に印象的なのはくっきりとしたベース・ラインですね。このよく歌うベースがアルバム中、一番ビートルズ的だな。
音楽的にもかなりわかりやすくなって。奇妙なユーモアも含めたスタックリッジというバンドの持つさまざまな要素を整理して、タイトにまとめ上げた、という感じ。メロディの良さがより際立つようになった。その分、以前にあったバンドらしい迫力やトラッド風味は余り感じられない。田園プログレ風味はわずかにフルートのソロに聴かれますが。

オープナーの超キャッチーな "Fundamentally Yours"、このサビ部分でのフィドルなどはそれまでになかったような響きで、まさにモダン・ポップという感じ。
また、"Pinafore Days" や "Galloping Gaucho" のようなコミカルな曲でも何だか堂々としていて、風格さえ漂っています。流石はジョージ・マーティン、というかプロの仕事ですね。
一方で、甘々のスロウもあって、これらは後のコーギスを予感させるようでもあります。

個人的な彼らのベストは前作にあたる「Friendliness」だけれど、この「The Man In The Bowler Hat」も英国ポップど真ん中といった仕上がりで、とても好きなアルバムです。
ところで、ジャケットに描かれている人物は男性で、彼らのマネージャーだというのは本当なのかな?

2014-10-19

マージェリー・アリンガム「窓辺の老人」


副題には〈キャンピオン氏の事件簿Ⅰ〉とあります。日本オリジナル短編集で、1937~39年に発表された七編が収録。
活字がでかいうえに300ページもないので、さくっと読んでしまえる。このボリュームはどうなの、アリンガムの短編で大したものはそんなに多くないということか、と勘繰ってしまうのだが。戸川安宣氏の解説には「このたび、キャンピオンの活躍する中短編の精華をあらまし年代順に並べて提供しようということになった」と書かれているので、今回収録されたのより後年に書かれた短編から編んだものが〈事件簿Ⅱ〉として出されるのでありましょう、きっと。
それはともかく、簡単な感想をば。

「ボーダーライン事件」 不可能状況と証人の心理の謎を扱っていますが、絵解きは盲点をついたあっさりとしたもの。そして、事件の解決によって見えなかった物語が立ち上ってくる、この結構が実に味わい深く、巧い。ぶっきら棒なタイトルの妙もまた、後から効いてくる。
「窓辺の老人」 オーソドックスな手がかり、謎解きの流れに沿って行動しているのだけれど、説明は全て結末まで後回し、というシャーロック・ホームズ以来の作劇法ですね。奇妙なキャラクターに非常に魅力的な謎、それに意外な展開で最後までぐいぐいと引っ張っていきます。
「懐かしの我が家」 読み終えてみれば、一人合点な探偵自身が事件を錯綜させている、といった感じではありますが。小さなアイディアを、見せ方でもって読ませるものに仕立てているのは確か。控えめなユーモアの加減も好ましい。
「怪盗〈疑問符〉」 設定が子供っぽくもチャーミング。嘘から出たまことというか、棚からぼた餅というか、偶然につながっていくようなプロットが楽しい。謎解きはまあ、おまけみたいなものだ。
「未亡人」 いかにも手の込んだ犯罪計画が楽しい。これもホームズ譚のような味わい。
「行動の意味」 チェスタトンや泡坂妻夫を思わせる奇妙な謎とその顛末が語られる。プロットは割りにストレートだが、シリアスな雰囲気とユーモアの対比がこの作品集中では際立っていて、クライムストーリー風の味わいも。
「犬の日」 キャンピオンが休暇中に体験した不思議な出来事を綴った小品。オチが読めてしまうのは仕方がないか。

全体としては、推理の面白さにはさほどこだわらず、飛躍のある展開や意外ななりゆきで読ませるといった感じですかね。
また、探偵役のアルバート・キャンピオンは奇矯なところのない控えめな英国紳士で、そこに物足りなさを感じるひともいるかもしれませんが、それが作品形式の柔軟さにつながっているようでもあります。要は使い勝手がいい、と。

がっちり構成されたミステリや強力な個性を期待するひとには向いていないかな。ゆとりを感じさせる語り口に乗せられた、古き良き時代の探偵小説です。

2014-10-13

アガサ・クリスティー「予告殺人」


「殺人お知らせ申しあげます。十月二十九日金曜日、午後六時三十分より、リトル・パドックスにて、お知り合いの方のお越しをお待ちします。右ご通知まで」
週刊紙《ギャゼット》の個人広告欄に載せられたそれは、一風変わった招待状のように思われた。近隣に住む人々たちは興味を引かれて集まって来たのだが。

1950年発表、ジェーン・マープルもの長編。これは有名作品ですね。僕も大昔に一度読んでいるはず。
魅力的な導入から意外な事件の発生までが非常にテンポがいい。マープルも割りに早い段階で登場。しょっぱなからちょっとした洞察で名探偵ぶりを見せてくれます。ただし、そこからははいつもとあまり変わらない。誰もに犯罪の機会があったが、手がかりらしいものはない、というお話。

実は犯人の見当は付きやすい。というか、クリスティはこのパターンを何度も使っているのでね、長編だけでも40冊も読んでくればさすがに。とても細かいミスリードがあるので、注意深く読めば逆に引っかかるかもしれませんが。
ただし、隠されていた物語は予想外なもの。考えてみればこれもお馴染みのパターンなんですけど、散々前振りをしたあげくにまだ使うか、という質の驚きがあります。
一方で、マープルの推理はいつもの人間観察よりも、むしろ状況証拠から組み立てていくもので読み応えがあります。伏線もお見事で、セントラル・ヒーティングの扱いなんかもう、唸っちゃう。

読み終えてみれば、とてもオーソドックスなスタイルで組み立てられたフーダニットでありました。古典的な謎解きが好きなひとには合うんじゃないかしら。

2014-10-12

The Originals / Baby, I'm For Real


オリジナルズのファースト・アルバム、1969年のリリース。
タイトルにもなっている "Baby, I'm For Real" はマーヴィン・ゲイが手がけたヒットシングル。ゴージャスでありながら軽やかで主役を邪魔しない管弦には「What's Going On」前夜という感じもある。ドゥーワップをベースにしたようなオーソドックスなコーラスと、入れ替わっていくリードの対比も素晴らしい。ロマンティックではあるけれど、実に締まった仕上がりだ。
勿論スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズという偉大な先達はいますが、モータウン産スウィート・ソウル、その本格的なものはここから始まったのではないか、と(半可通ながら)思うわけですよ。

このアルバムの時点では、"Baby, I'm~" を除くと残りの曲は全て、ひとりのシンガーが一曲通してリードを唄うかたちを取っていて、曲によって四者四様のバラエティを楽しめるようになっています。いかにもデトロイトらしいノーザンダンサーもありますが、出来は悪くないもののやや個性に欠けるかと。耳を引くのはゆったり目のミディアムからスロウですね。
特にいいのはやはりC.P.スペンサーがリードのもの。元々のアルバムタイトル曲であった "Green Grow The Lilacs" は美しいメロディに広がりのあるコーラスアレンジやトランペットの間奏があいまってサンシャインポップ風味が濃厚であるし、"You, Mysterious You" の定型を脱した展開からは新しい時代のソウルを予感させられる。
また、ホランド=ドジャー=ホランド作の "We've Got A Way Out Of Love" はコール&レスポンスのスタイルこそ'60年代モータウン的なものですが、裏声トップからベース・ボイスまではっきり聴かせるつくりになっていて、清新な印象。コーラスグループとしての確かさも伝わってきます。

ところでこのアルバム、昨年になって日本のユニヴァーサルからリイシューされていまして。旧盤CDの極端に低い音圧が改善されたのは良いのだが、ブックレット記載の作曲クレジットが全部間違っていて(他のタイトルのものと入れ替わっているのでは?)ちょっと残念。

2014-10-05

レオ・ブルース「ミンコット荘に死す」


寝室で自殺しているのを発見された男には、そうする動機がない上、現場には不可解な状況が。ただし、彼を殺害する動機もまた見当たらなかったため、警察は自殺と判断。歴史教師キャラロラス・ディーンは独自に捜査を続けるが、やがてさらなる事件が。


1956年発表作。ディーン初登場の『死の扉』は二年前に東京創元社から新訳が出されて話題になりましたが、この『ミンコット荘に死す』はシリーズ3作目です。装丁はこれもレトロ風味なもので、(出版社が異なるにもかかわらず)『死の扉』と同じデザイナーが手がけたそう。

非常にオーソドックスな探偵小説らしく物語は進んでいきます。証拠は見つからないが機会はだれにでもありそう。そんな煮え切らない状態が続き、中盤くらいまでは結構地味(もっとも、最後まで読めばこれは必然であることがわかるのですが)。ディーンの教え子であるプリグリー君の活躍場面が少ないのも物足りないな。

フーダニットとしては既存のアイディアを一捻りしたものであって、これだけでも結構面白いのだけれど、本作の肝は意外な動機。そして、それが判明するのは、まさしく終盤に犯人の計画が完遂された時点である。取り立てて特徴の無いようにみえた物語に、この作者らしい捻くれた趣向が隠されていて、これはお見事。
ただ、謎解きそのものは分量はあるけれど、わりに大雑把。黄金期の作風を踏襲しているようでありながら、読みどころはプロットということになるでしょうか。

期待の仕方を間違えなければ、楽しんで読めるミステリだと思いますよ。

2014-10-04

George Harrison / Living In The Material World


1973年、前作「All Things Must Pass」から二年半ほどのインターバルを挟んでのリリース。
スロウの曲が多めに入っているのだけれど、それらではサウンドがもっさりというか、どうも焦点がはっきりしないような感じ。オルガンはもっと控えめなほうが良かったんじゃあ。特にアルバム後半では似たようなテンポのものが並ぶことで、互いの印象を打ち消しあっているきらいもあります。続けて聴くと、かったるい。CDのボーナスに入っているシングルB面曲のような、リラックスした雰囲気のものがチェンジ・オブ・ペースとして混じっていれば、と思うのですよ。
そういった詰めの甘さもまた、ジョージらしいという気はしますが。個人的には軽快な曲が入ったアルバム前半部分のほうをよく聴きます。

シングル・カットされたのが "Give Me Love (Give Me Peace On Earth)" で、ジョージにとって二曲目のチャート・トッパー。なのだが、曲自体はあまりあざといところの無い素直なプロダクションのもの。当時の人気はすさまじかった、ということなのだろうな。タイトルを連呼する部分のメロディーがバックに対してずれていくのがフックといえば、そうか。スライドのキレは勿論、ジム・ケルトナーによるドラムの組み立ては素晴らしいし、クラウス・フォアマンの弾くベースもよく唄っています。
都会化したスワンプ・ロック、という印象のファンキーなミディアムが "Sue Me, Sue You Blues"。アラン・トゥーサンと共通するようなセンスも感じられ、ここ最近、特に気に入っています。サビ部分やエンディングのフュージョンっぽい演奏も格好いい。
"Don't Let Me Wait Too Long" はカスタネットやティンパニも入って、ガール・グループの線を狙ったのでありましょうか。ロイ・オービソン風の "Who Can See It" もそうですが、ライターとしてもシンガーとしてもそんなに器用というか何でもできるひとではないせいか、ジョージ・ハリスンの曲以外の何物でもない、という仕上がりですな。

新リマスターは2006年版と比較すると音圧が抑え目に。そのせいか、音像に奥行きが感じられるようになったのでは。高音も気にならず、落ち着いて聴けますわ。

2014-09-28

フィリップ・K・ディック「宇宙の眼」


ペバトロン陽子ビーム加速器の見学をしていた人々は、突然の装置の暴走による事故に巻き込まれ、負傷する。やがて病院で意識を取り戻すのだが、どうもこの世界は何かがおかしい・・・・・・。


1957年作品。たしか筒井康隆がこの作品とフレドリック・ブラウンの『発狂した宇宙』を多元宇宙ものの古典として挙げていた、と思う。僕は昔、『虚空の眼』のタイトルで読んでいます。
今回の文庫化は中田耕治訳ということで、元々は'59年にハヤカワSFシリーズに入っていたものらしい。新たに手が入れられているようで、特に古さを感じさせない文章になっています。

世界から感じられる違和感の正体や原因というのは、割合早い段階で明かされてしまう。そして登場人物たちは事態の解決へと動くのだが、状況の異様さはエスカレートしていく。ときに悪夢のようであり、ときに馬鹿馬鹿しく、あるいはとてもリアリスティック。この部分に惜しげもなくアイディアがぶちこまれていて、どんどんと引き込まれますな。枠組みはSFだけれど、もう奇想小説としたほうがふさわしいような、不条理なユーモアも感じられて。特に主人公の家がグロテスクに変容していくイメージなど絶品。

展開はスピーディーでかつ明快、それでいてディックらしさも充分。
気軽に読めるけれど内容も濃い作品でした。面白いよ。

2014-09-25

George Harrison / The Apple Years 1968-75


ジョージのアップル箱が来ました。

パッケージはダーク・ホース時代のと同じようなつくりになっています。大きさもほぼ同じ。
ただ今回、それぞれのディスクは紙ジャケットというか、デジスリーヴに収納されております。インナーバックが付いていて、そちらはオリジナルに準じているものもあれば、そうでないものも。
まあ、ちゃんと作られてはいるとは思いますけれど。中途半端にやるならジュエルケースのほうが良かった、という意見も出るかな?


入手するまでよくわからなかったのが、「All Things Must Pass」と「Living In The Material World」が新規リマスターなのか、それとも以前(「All Things~」なら2001年、「Living~」なら2006年版)と同じなのかで。実際に見てみると、この2タイトルも2014年のリマスター、と表記されていました。
特に「All Things~」のほうは、2001年版と比べると音圧はやや控えめで、中域がしっかり出ているような印象です。どっちにしてもごちゃごちゃしたサウンドですけれど。

あと、付属ブックレットは薄いものですが、写真にはいい紙を使ってますね。
DVDもそのブックレット内に収められています。僕は今回輸入盤を購入しましたがNTSCのリージョン0仕様であって、普通に視聴できました。が、中身は以前に見たことのある映像が殆どかな。


これからしばらくはジョージ三昧だ! という気にはまだなっていないのですが。まあ、ぼちぼち聴いていこうかな、と。

2014-09-23

The Association / Insight Out


1967年リリースのサード・アルバム。
アソシエイションのアルバムにはいいものが多いけれど、そのうちでもコマーシャルなピークならこれかと。何をやってもうまくいくような、そんな勢いに溢れているし、なんといっても2つの特大ヒット・シングル "Windy" と "Never My Love" があるのだから。

このアルバムと翌年の「Birthday」でプロデュースを手がけているのはボーンズ・ハウ。繊細なアレンジとLAのセッション・ミュージシャンによる意外なほど力強い演奏(特にドラム)がはっきりと捉えられている音像は、傑出したエンジニアでもあった彼によるところが大でしょう。
楽曲面では、これ以前よりも外部ライターの手によるものを増やしたことが良い風に出ているよう。それによって、かえってメンバーによるオリジナルのほうも明快な曲調のものばかりが採られることになったのではと思う。
また、ジャズ畑出身のクラーク・バロウズによるボーカル・アレンジも、アイディア豊富かつ親しみやすいもの。けっしてやり過ぎない塩梅がいいのですね。

全体としてフォークロックというより、はっきりとポップに振ったサウンドで。メランコリックなスロウでも軽やかさが感じられる仕上がりはとても好み。
甘く華やか、それでいて快活さもあって。つくづく良いアルバムだなあ、と。


英Now Soundsからのモノラル・リイシューにはボーナストラックがたくさん入っていて、その中に未発表であった "Autumn Afternoon" というアドリシ兄弟の書いた曲があります。お蔵入りにするには勿体無いような、なかなかの佳曲なのだけれど、ライナーノーツには当時渡米していた日本の有名グループもこの曲を録音した、と記されています。バリー・デヴォーゾンも関わっていたというこのグループはジャニーズのことらしいですな。

2014-09-21

アガサ・クリスティ-「ねじれた家」


「もうつぎの人殺しがあってもいいころね?」
「つぎの殺人ってなんだい?」
「探偵小説では、もう二番目の人殺しがいつもあるころですもの。真相を知っている人が、それを喋らないうちにやられちゃうのよ」

1949年発表のノンシリーズ長編。
資産家の老人が急死した。常用しているインシュリン注射、その薬瓶の中身が入れ替えられていたのだ。老人には年の離れた後妻がいて、老人の家族から疑いの目で見られている――というお話。
タイトルはマザーグースの歌詞からきており、事件の舞台となる邸宅も指しているのですが、ねじれた家に住むねじれた人々、というほどには異常な人間は出てこない。
ユーモア味が薄いわりにサスペンスも控えめで、うっすらとした不安が全体を支配しているようである。

この作品、クリスティ自身のお気に入りのひとつであるそうで、実際に凄くよくできたミステリなのだが。
困ったことに、年季の入った読み手だとある先行作との類似に思い当たって、推理するより前に犯人の見当が付いてしまう。そうするとむしろ、このテーマがいかに料理されているか、というのが見所になるのだけれど。クリスティはさらにひとつ、別の趣向を重ねることで、真相を徹底して見えにくいものにしているようだ。
また、周辺を固める小道具の使い方が冴えてますな。遺言状をめぐる謎などは、それだけを取り出すと大したことはないのだけれど、プロットに絶妙な捻りを与えていると思います。

非常に手の込んだ作品ですが、本質はアイディア一点勝負。ゆえにあまり予備知識を持たずに読むのが吉かしら。

2014-09-15

The American Breed / Lonely Side Of The City


ロジャー・ニコルズがトニー・エイシャーを作詞家に迎えて書いた "Always You" という曲がとても好きだ。
最初に聴いたのはサンダウナーズというグループのヴァージョンだったのだけど、この曲が僕にとって特別なものになったのは2007年の再結成ロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズのものを聴いてから。39年のブランクを経て届けられた "there's always you / thank God for you" というフレーズがとても感動的に響いたのですね。


「Lonely Side Of The City」はシカゴ出身のグループ、アメリカン・ブリードが1968年にリリースした4枚目にして最後のアルバム。韓国Big Pinkからのリイシューです。

この一曲目にも "Always You" が入っていて。サンダウナーズのほうがストリングスも入ってドラマティックであるけれど、こちらはシンプルな分メロディの良さがより伝わりやすいと思う。乾いたドラムの音も好みであって、比較すればやや落ち着いて都会的な感じかな。まあ、どちらも良いのね。
このアルバム、アナログA面にあたる前半が穏やかなサンシャインポップといった趣でとても好みです。オリジナル曲はメロウな出来であるし、カバーではピート・アンダース&ヴィニー・ポンシアの "New Games to Play" という曲も演っており、これもソルト・ウォーター・タフィーあたりを思わせる楽しさ。
そしてA面の終わりにはまたロジャー・ニコルズの曲で、ポール・ウィリアムズと書いた "To Put Up With You" が取り上げられていて、しみじみと聴かせてくれます。

一方でアルバム後半になると、ぐっとMORポップス寄りのものや土臭いアレンジのもの、ソウルっぽい曲なども試みてはいるけれど、逆に個性があまり感じられなくなっているようではあります。そこそこではあるものの、芯になるような強力な曲がないのも正直なところ。

客観的に見ると、バブルガムでヒットレコードを出していた彼らが、セールスの落ち込みとともに色々と試行錯誤していたわけで。全体とすれば中途半端な作品かもしれませんが。
まあ、個人的には捨て置けない、というところであります。

2014-09-14

マーガレット・ミラー「悪意の糸」


マーガレット・ミラーなんて読むのは何年ぶりだろう。1950年の作品だそう。

ミラーというと語り手が自分自身に嘘をつき続けるようなミステリの印象が強いのだけれど、この作品はずっと平明。陰鬱さもあまり感じず、心理の書き込みも抑え目で、全体の雰囲気やプロットは凄く私立探偵小説っぽい。

主人公は女医であるシャーロット。彼女は若い女性からの中絶手術の依頼を断るのだが、後になってその患者のことが気になり、住所を訪ねて行く。家の持ち主である患者の叔父はみるからにうさんくさい男であり、かつ何かを隠しているようであった。言付けを残して帰宅したシャーロットは、ガレージで何者かに殴られ、気を失ってしまう。

シャーロットが仕事の範囲以上にその患者のことを気にかけるのは、その境遇に不倫をしている自らを重ね合わせてしまったからなのだが、そのことによって自らも脅威にさらされる羽目になってしまう。ここら辺りからは巻き込まれサスペンスとしての要素も加わる。
途中で事件性のある出来事が起こってからは刑事が登場。こいつがやたらにクールな野郎であって、台詞のほうもワイズクラックふう。そうすると、シャーロットはヒロインっぽく見えてくる。

真相のほうは可能性が限定され過ぎているため、割りと見当が付き易くなっている。しかし、その開示シーンの迫力・説得力は流石にミラー。また、意外なくらいに伏線の綾もよくできている。
何より、旦那のロス・マクドナルドがまだ駆け出しといっていい時分に、ミラーがこれをものしたというのが驚き。

というわけで、僕の持つマーガレット・ミラーのイメージとは少し違いましたが、コンパクトでありながら内容は濃く、非常に形よくまとまったミステリでありました。

2014-08-31

Billy Stewart / I Do Love You


ジョージィ・フェイムが演っていた "Sitting In The Park" はこのひとがオリジナル。

ビリー・スチュワートというソウル・シンガーは1950年代半ばから活動していたそうなのだけれど、これは'65年になってチェスから出された彼のファースト・アルバム。収録曲の半分ではスチュワート自身が作曲も手がけています。
プロデューサーを務めているビリー・デイヴィスは、チェスのスタッフになる以前はデトロイトでベリー・ゴーディと共に仕事をしていたそうです。そのデイヴィスの書いた曲も入っているのですが、なるほどそう知ると初期モータウンと共通するようなテイストのミディアムもあるかな。

この時期のアルバムによくあることですが、古いシングル曲なども入ってまして、制作時期を一番さかのぼるものは'62年に作られた2曲。うち "Fat Boy" ではボ・ディドリーが共作者としてクレジットされています。鳴っているギターも、それっぽい。

もっともここでの聴き物はスムースなスロウでしょう。中でも抜群なのはやはりシングル・ヒットした2曲、タイトルにもなっている "I Do Love You" と先に挙げた"Sitting In The Park" であります。いずれもこの時代のものとは思えない、実に洒落た仕上がりで、後々のスウィート・ソウルの原型と見ることも出来そう。オルガンとピアノを絡めた風通しのよい演奏はルビー&ザ・ロマンティクスをソウル寄りにした、という感じもあるかな。美しいコーラス、そこに伸びやかなテナーが映える。少しジャジーな軽やかさはシカゴならではか。

いわゆるアーリー・ソウル、そこから都会的な次代のものへと変化するさまを捉えた一枚。