2019-01-27

Classics IV / Spooky/Mamas And Papas Soul Train/Traces/Song


昨年の暮れに英BGOよりリリースされたクラシックス・フォーの2CD。1968~70年にかけてImperialおよびLibertyから出た4枚のアルバムをまとめたものであります。
彼らの場合、コンピレイションはいくつか出ていたのだけれど、なぜかオリジナルアルバムの形でのリイシューは(怪しいものを除けば)これまでされてなかったので、これは待たれていたのではないかしら。


ファーストの「Spooky」はタイトル曲がヒットしたことを受けて急造されたのか、その "Spooky" を除くと、それほど大したことが無い。オリジナルと有名曲のカバーが半々で、中ではスタンダードの "You Are My Sunshine" のファンキーな仕上がりがユニークというか何と言うか。ボーカルはジェイムズ・ブラウンの物真似だし。一方、オリジナルの "Poor People" は純然たるハリウッドポップ。この曲や次の "Book A Trip" なんて聴くと、やはりスタジオ・ミュージシャンの演奏だよな。
他にはデニス・ヨスト以外のメンバーがリードボーカルを取っている曲もあって、まだスタイルがまとまっていない感じがします。

セカンド「Mamas And Papas/Soul Train」になるとオリジナル曲が中心になり、プロダクションもしっかりしたものに。全体にソウル色を感じさせるアレンジ、歌唱が聴けるものが多く、特にスロウの "I Pity The Fool" など堂々としたものだ。ヒットした "Stormy" でのエレクトリック・シタールの使用もソウル的な流行から考えればしっくりくるな。また、わざわざ "The Girl From Ipanema" までファンキーに料理しているのだが、これが悪くないのだ。
ソングライティングの面では "24 Hours Of Loneliness" あたりに洗練というか、よりポップな方向へ向かう兆しが見えています。

1969年に出たサード「Traces」はぐっとミドル・オブ・ザ・ロードな方向へシフトした内容。ストリングスも入って、ロックバンドらしさは薄くなっていますが、その分ポップスとしては迷いがないとも言えます。アルバム4枚のうちどれか、といえばやはりこれになるかな。中ではトミー・ロウの "Traffic Jam" が軽快なサンシャイン・ポップであって、特に好みですね。

翌年の「Song」はImperialの親会社であるLibertyよりリリース。ジャケットにあるのはデニス・ヨストの顔だけであり、ヨストの名前がグループ名より大きく記されています。
音楽のほうはゴージャスなオケをバックにソロシンガーがしっとりと唄い上げる、という感じで、ときおりB.J.トーマスあたりに近い印象も受けます。全体に曲の粒は揃っていると思うのだけど、個人的にはやや落ち着き過ぎかな。都会的な面を強調した "Midnight" や、ブルー・アイド・ソウルとして聴ける "Pick Up The Pieces" なんていいですけれど。


ヒット曲だけ取ると似たようなものばかりながら、アルバム単位で聴くと短い期間のうちにも音楽性にはある程度、変遷があるのが感じられます。その初期においてはバンドとしての雰囲気を残していたのが、最後にはデニス・ヨストのソロといってもいいようなムード歌謡になっていくという。
あと、ライナーノーツを読んで知ったのですが、大ヒットシングルをいくつも持っているわりには、これらのアルバムはさっぱり売れなかったようであります。そういったところもリイシューが遅れていた理由かもしれませんね。

2019-01-03

Johnny Mandel / M*A*S*H (original soundtrack)


1970年のいわゆるニュー・シネマ、そのサウンドトラックであります。映画のほうは昔テレビでかかったときに一度見たことがありますが、あまり印象が残っていない。個人的に良く覚えているのはテレビドラマシリーズのほう。もっと思い入れがあるのはリチャード・フッカーの原作小説ですね。

この盤はいかにも古い時代のサントラらしく、劇中のダイアローグが盛り込まれているのですが、曲中にも会話が割り込んでくるので、純粋に音楽を楽しむにはあまり向かないのです。ジョニー・マンデルによる劇伴曲のほか、日本の古い歌も入っていて面白いのだけれどね。

テーマ曲は "Suicide Is Painless" で、さすがにこれは余計な邪魔もなく聴けます。パセティックなフォークロック調の曲で、レターメン風の男声ユニゾンがハーモニーへと変化していくさまが美しい。歌っているのはベイラー兄弟らL.A.のセッションシンガーたちで、まあ、聴き所というとこの曲に尽きるのですが(シングル盤も良く売れたそう)。さて、ここからが本題。
1973年にアーマッド・ジャマルがこの曲をカバー、シングルでリリースしている。リチャード・エヴァンズがアレンジを手掛けたこれがえらく格好いいジャズファンク。翌年のアルバム「Jamalca」にも収録されているらしいのだけれど、これが全く再発の対象にならないのだ。
ところが、このジャマルのヴァージョンが「MASH」のサントラ、その1973年の再発盤でコーラス・ヴァージョンの代わりに収録されたのだから妙な話。現在出回っている「MASH」の廉価版CDでもボーナストラック扱いで聞くことができるのは非常にありがたいのだが、サウンドの質が全く異なるのでなあ、「Jamalca」も出してよ、とは思う。