2019-11-24

James Brown / Live At Home With His Bad Self


1969年10月1日、ジェイムズ・ブラウンは故郷ジョージアのオーガスタにあるベル・オーディトリアムでホームカミング・コンサートを行った。そのライヴは「James Brown At Home With His Bad Self」というタイトルでのアルバム化を意図したものであった。しかし、数ヵ月後になってバンドのメンバーが大量離脱することによって、その企画は立ち消えとなる。
翌年の春、新しいバンドによるシングル "Sex Machine" がヒットしたことを受けて、同タイトルのダブル・アルバムが制作された。一枚目はスタジオライヴに観客の歓声をオーバーダブした疑似ライヴである。深いエコーが気持ち悪く、個人的には好きではないサウンドだ。そして、その二枚目には(二曲を除いて)お蔵入りになっていた前年のホームカミング・コンサートの音源が使用された。こちらも編集は乱暴で、いかにもJBらしい。


「Sex Machine」カバー裏より
"LIVE AT HOME IN AUGUSTA, GEORGIA WITH HIS BAD SELF"

前置きが長くなったが、このライヴ・アルバムは「Sex Machine」アナログ二枚目に収録されていたものの拡大盤となる。七曲が未発表となるもので、残りも新たにミックスされており、曲によっては明らかにピッチが変わっています(従来のものは遅かったらしい)。
音質のほうは時代を考えればまあ上々か、序盤はややレンジが狭いかな、という感じ。しかし、当然のことながら演奏は最高オブ最高。なんたって1969年のジェイムズ・ブラウン・オーケストラなのだ。こんなこと毎日続けていたらそのうち死ぬぞ、という緊張感。

オープニングの "Say It Loud - I'm Black And I'm Proud" は編集盤「Motherlode」にも収録されていたが、そちらはDJ仕様なのかライヴのアンビエンスを取り除くようなミックスがされていて変な感じがしたものだ。今回は客の反応もばっちり、盛り上がる。
また、"There Was A Time" の尺がかなり伸びているのも嬉しいところ。ここから未発表であった "Give It Up Or Turnit A Loose" へとなだれ込む流れはこの盤のハイライトのひとつだ。
あと、"Mother Popcorn" も「Sex Machine」のと比べると相当に長くなっているのだが、これは編集盤「Foundation Of Funk」にも入っていたな。

個人的にはこの時期のJBがベストだと思っている。メンバーの充実に加えて、シンガーとしての状態もあって。"It's A Man's Man's Man's World" の歌い出しなど、ぐっときます。

2019-11-10

The Beatles / Abbey Road


「Abbey Road」のリミックスを聴いて考えたのは、なんでこんなものをわざわざ作ったのだろう、ということだ。全体としては大して印象の変わらないものを作る、その意図がわからない。音質が劇的に向上しているとも思わない。これならオリジナルを聴けばいいじゃない。

しかし、そもそもリミックスというのは昔の素材ほど扱いが難しい。ビートルズの音楽に新たなセンスを付け加えたものなんて聴きたいか? しかも実際のレコーディングに関わったやつらはいないんだぜ? どうしたって勝ち目は無い。
そうすると、制作者の意向はむしろ、未発表テイクの仕上がりにこそ反映されているのではないか。ドライなエコー、ソリッドなギターは実に格好いい。本編よりもバンドらしいダイナミズムを感じる。この調子でアルバムもミックスできればよかったのだろうが。

ブックレットの最初のページ、とてもダサい。それはそうと、なんで「THE」をつけたのだ?

よくアルバム「Sgt. Pepper~」について、楽曲の出来自体がいまいち、という意見を見るのだが、個人的には「Abbey Road」のほうが落ちるじゃん、と思っている(勿論ビートルズとして、という高いレベルでの話ではあるけど)。しかし、サウンドのつくりやアレンジ、構成での聴かせかたがとんでもなく素晴らしい。それが後進のUKモダーンポップに与えた影響がなんて始めると、またしゃらくさい話になってしまいそうだ。


"Oh that magic feeling, nowhere to go"、つまりはそういうことなのね。このくだりにくるといつも、うんうん、その感覚なんだよ、となる。まったくうまくは説明できないけれど、夢の中かもしくは海底みたいなね。