2010-04-25

Jan & Dean / Carnival Of Sound

ジャン&ディーン、’60年代後半の未発表(未完成)アルバム。
音源自体は、アセテート盤から起こしたものがファンの間で出回っていたが、正規な形でリリースされたことは喜ばしい。今回、ジャン・ベリーによるオリジナルの(おそらくは最終的な)モノミックスと、新たに作成されたステレオミックスが収録されている。
ブックレットにはレコーディングに関する詳細なデータも添えられており、1966年から'68年にかけて如何にしてセッションが進んでいったか(そして頓挫したのか)を知ることが出来る。

ジャン・ベリーは1966年に交通事故を起した。乗っていたコルヴェットは大破、彼自身も肉体と脳に大きなダメージを受け、喋ることも満足にできなくなってしまった。そんな状態であっても音楽への意欲は衰えておらず、フラワーパワーの時代に対応したジャン&ディーンのレコードを作ろうとしたのだ。
そうして出来た実際の音のほうは、ファズを掛けたギターやシタール、SEなどでサイケデリックな装飾を施したカリフォルニアポップといえようか。ハル・ブレインによるドラムはなんだか叩きまくりではある。ジャン自身によるオリジナル曲の出来も非常にいい。よくぞここまで、という感すらある。
しかし、「幻の名盤」なんてものは、そうそう無い。売れなかった、あるいはお蔵入りしたレコードにはそれなりの理由がある。

結局、あまりにまともすぎるのだ。従来のジャン&ディーンのものと同じく、陰影に乏しく予定調和的な曲想のものばかりで、あくまでオールディーズポップ。意欲的なアレンジとはミスマッチな場面も少なからずある。
もし、このアルバムが当時完成していたとしても、それほど売れたとは思えない。厳しく言うと、時代に乗り損なっている。
何より1968年にはもう、これほど楽天的なポップスは受け入れられなかったのでは。

しかし、時代的なことを考えなければ、ジャン&ディーンのファンでなくとも充分に楽しめる出来である。バラエティに富んだ曲、演奏ともに素晴らしい。
現在でこそ、価値が認められるリリースだと思う。


0 件のコメント:

コメントを投稿