2016-07-26

エラリー・クイーン「エジプト十字架の謎」


クリスマスの朝、ウェストヴァージニアの寒村で発見された死体は、T字路にあるT字型の道標にはりつけにされていた。頭部が切り落とされた死体そのものもTの文字をあらわしているようであり、さらには被害者の家のドアにもべっとりとした血でTと書かれていた。これら奇怪な印は一体何を表しているのか? 頭を捻るエラリーであったが、やがて次なるはりつけ姿の首無し死体が。


創元からの国名シリーズ新訳が、二年ぶりに出ました。
今作は1932年に発表された第五作目で、それまでの作品と比べて事件が非常に猟奇的で派手なものになっているのが目を引くところ。そして、調査・尋問と続くのではなく、検視審問によって事件の概略が説明されることで、展開が省略されて物語に入り込み易くなっています。また、かなり離れたふたつの土地を事件の舞台とすることが、物語の雰囲気を変えることに結びついています。この辺り、物語作家としてのクイーンの変化が見て取れるところです。

ミステリとしては解決編における犯人確定のシンプルなロジックが有名ですが、中盤での故意に残された証拠を巡る、ねちっこい推理も素晴らしい。しかし、複雑極まりない犯罪計画でありますな。犯人が偽装をする動機が表裏、二重になっているところなどなかなか凄い。
また、ミスリードではないけれど、事件の核心をずらしていく構成も実にうまいと思います。

クイーンについては色々と思うところがあるのだけれど、単純な楽しさでいうとやはり国名シリーズが一番だな、と再認識した次第であります。大詰めの追跡劇から結末への流れは華が感じられるもので、これもまた初期クイーンならではの味わいです。

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