2019-02-09

アンソニー・ホロヴィッツ「カササギ殺人事件」


舞台は1955年の英国。病気により余命2、3ヶ月となった名探偵アティカス・ピュントは残された時間を静かに送るため、もう事件の依頼は受け入れないつもりでいた。しかし、田舎の小さな村からロンドンまではるばるやってきた若い女性の相談──婚約者が自分の母親を殺したという疑いの目で見られている──に、つい耳を傾けてしまった。


昨年、一番話題になった翻訳ミステリなので、とりあえず読んで見た。結論からいうとわたしはそれほど感銘を受けなかったのです。

ます、アラン・コンウェイ作『カササギ殺人事件』なんですが、こちらはオーソドックスなフーダニットとしてとても楽しく読めました。
最初の事件の真相はまあ、見当が付きやすい(というかクリスティのパスティーシュならこうなるだろう、という)もの。
そして第二の事件のほうなのだが。なるほど過去にあった出来事を読み解くことで現在の事件の構図が明らかになる、というのはいかにもクリスティらしい趣向ではあります。解決編のプレゼンテーションも良い。まず、ひとつひとつはそれほどでもない伏線を、しかし大量に回収していく。見事ではあるけれど、これらはまだ、そうであれば綺麗に収まる、というレベルにとどまるもの。だが、最後になって些細だけれどこうでしか説明できないという事実を出してくる。これにより、全体がびしっと締まりました。
純粋に謎解きだけをとればクリスティの水準作を上回っていると思います。ただし、ストーリーテリングやパズルがドラマを生み出すという点ではそこまではいかないかな。

一方で作中の現実パート、小説『カササギ殺人事件』をめぐって起きる事件のほうは、まあそこそこというか。こちらの登場人物が作中作のモデルになっていたりするので、事件の手掛かりも作中作に忍ばされているのではないか、とわたしは勝手に思ってしまったのだ。
このパートの仕掛けとしては遺書のトリックがメインだと思うのだが、いくら何でもヒントを出し過ぎである。ああ言われれば読み返すし、読み返せば気付くよ、そりゃあ。
あと、犯人はそもそも結末だけでなく原稿全体を抹消してしまえばよかったんじゃないの、と考えたのですが、どうかしら。

悪くはないけれど、期待し過ぎたのかなあ。上巻を読んでいるときはなるほど、これはいいぞ、と思っていたのだけれど。

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