2020-11-01

Astrud Gilberto / Gilberto With Turrentine


アストラッド・ジルベルトがCTIで制作した唯一のアルバム、1971年リリース。
アレンジはエウミール・デオダート。タイトルこそ「ウィズ・タレンタイン」だが、スタンリー・タレンタインが参加しているのは全10曲中4曲にとどまる。
このアルバム、レコーディングが完成する以前にアストラッドは何か気に入らなかったのか、仕事を放棄してしまったそう。2曲インストが入っているのは苦肉の策だったわけだが、完成した作品はスムーズな流れの感じられるものになっていて、このあたり流石はクリード・テイラーといったところ。

音楽のほうは、アルバムのアタマとケツをバカラック&デヴィッドの曲でまったりと包んだミドル・オブ・ザ・ロードのポップスの間に、CTIらしいブラジリアン・フュージョンが挟まれているといった具合。
特に後者のクールでカラフルなアレンジ、適度な緊張感を湛えた演奏が気持ちいい。ただしバックが印象的な分、ボーカルの存在感を薄く感じる瞬間もあります。バランスがうまくいっているときには親しみやすさを残した歌物フュージョンという趣があるのだけれど、逆にヘナヘナとした歌が邪魔にさえ思える曲もあって、痛し痒しではあります。

個人的なベストは "Mulher Rendeira" という、ボサノヴァ以前の時代の古い曲。ここでは "Braziliam Tapestry" というタイトルがつけられていますが、これぞデオダートという洒落たものに生まれ変わっていて、実に格好良いです。

なお、海外盤CDにはアウトテイクが3曲ついているのだが、アルバム本編よりずっとリラックスしたつくりで、こういうほうがアストラッド・ジルベルトには合っている、とは思います。うち2曲がニルソンの曲というのも(13曲目が「"Polytechnical High" (Deodato, Everett) 」とクレジットされているが、これはニルソンの"Poly High" である)好ましく、ポップスファンとしては思わぬ拾い物でありました。

0 件のコメント:

コメントを投稿