1951年長編。再読です。
ハリウッドのホテルに滞在するエラリイのところへ事件が持ち込まれる。この導入部分が私立探偵小説もののパロディのようであって、ちょっと気持ちが悪い。以降、エラリイはセクシーな人妻を相手にした欲情を押さえ込みながら探偵していきます。
小説としては会話とエラリイの心理描写が続くばかりで、厚みが感じられない。というか、部屋の中で喋っているばかりですね。
また、ニューヨークやライツヴィルを舞台にしたときとは違って、ハリウッドという土地には書割くらいのリアリティしかありません。
ミステリとしてはどうか。中心となっているアイディアは本当にすごい、と思う。しかし、残念ながら誤りの解決に説得力がまるで無く、作品内の人物たちがそれで納得させられているのには、わざとらしい芝居を見せられているようでしらけてしまいます。ハリウッドだからこういうことが可能なのだ、とかいわれても、ねえ。もはや細部を緻密に詰めるだけの力がなくなりつつあったのではないかと思ってしまいます。
あと、そもそもこの犯罪計画自体がエラリイの介入を前提にしなければ立てられないものだと思うのだが。
構想は素晴らしいのです。実際には犯人が不確定なまま作品が終わってしまう、というのにもしびれました。
ですが、ファン向けなのにファンを納得させる力を持ち得ていない、という気はします。
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