2021年発表、函館周辺を舞台にした、フランス人青年ジャン・ピエールが探偵役を務めるシリーズの三作目。
前二作と同様、死体が複数転がりますが、今作では個々の事件の関連を主張するように、それぞれの死体の額に同じかたちの傷が付けられているのです。さらに、犯行のひとつが行われたのは準・不可能状況といえそうな場所であります。
また、それらとは別に二十年ほど前のものと思われる白骨体が発見されていて、果たしてこれは本筋にどう繋がってくるのか。とりあえず謎には事欠かない。
取っ掛かりの事件については、ある程度ミステリを読んできたひとなら、大雑把な当たりは付けられるかも。ただ、それと他の事件との結びつきを見出すのはそう簡単ではない。個々の物証にこだわっていても、全体像はなかなか見えてこない。過去に根をもつ人間関係のややこしさが現在の事件のありように反映されているようなのだ。
ようやく周辺的な事実が判明し、さてこれがどう……そう思ったタイミングでジャン・ピエールが絵解きを始めてしまった。
冴えたロジックにより動機が導かれ、並行して事件の流れが再構築されていく。その過程で浮かび上がってくる、さりげなく配置されていた伏線の数々が凄く鮮やかであります。何度も唸っちゃった。
そして謎が解かれることで、ある人間像(といっていいのか)が立ち昇ってくる。これはずーんと来ますね。
みっちりとしたパズラーを堪能しました。抜群。
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