2025-09-13
エリザベス・フェラーズ「さまよえる未亡人たち」
1962年のノンシリーズ長編。
長い海外生活から英国に帰国した青年ロビン。彼が休暇旅行先で一緒になったグループの間で事故が起こるのだが、それが殺人ではないか、というお話。
240ページくらいしかないのですが、取っ掛かりにちょっと手こずった。
主人公のロビンは、思うところがあり他人とは距離を置いて接しようとしているようである。その為、他の登場人物たちも一通りキャラクターは作られているのだが、それぞれの内面まではわからなく、ときどき区別がつかなくなる。また、なかなか事件も起こらないため、最初のうちは読んでいて正直かったるい。
全体の三分の一まで進んだあたりでロビンとその他の人々との距離が少し縮まります。彼が他人からどんな風に見られていたのか、さらに同行者たちの抱えていた問題が明らかにされてからは、物語に一気に引き込まれていきます。
ミステリとしては毒殺が扱われているのだが、被害者が誤って殺された可能性もあれば、自殺の線も捨てられない。ロビンは何か引っかかるものを見聞きしているはずなのだが、それが何かが自分でもはっきりしない。
それでも話が進むにつれ、さまざまな推理がなされ、隠れていた事実などが浮かんできて、容疑も二転三転。
終盤に入って、ひとつの気付きが状況をがらり、と変化させる。複雑に見えたものが、とてもすっきりとした形に収束していくのだ。これぞパズラーの醍醐味であるよね。容疑者の範囲は限られたものであるが、その上での意外性の演出も決まった。
さらに物語としての終結も簡潔でスマート、粋だねえ。
あまりに洗練が過ぎて地味に感じられるくらいでありますが、実に良く練られたミステリでありました。
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