2009-09-21

アントニー・レジューン「ミスター・ディアボロ」

1960年作品。
黄金期の本格、特にディクスン・カーを意識したようなミステリであり、17世紀に起こったと伝えられる怪事件、それにまつわる人物が現代に甦って、衆人監視のもとでの消失や密室殺人を起す、という如何にもゾクゾクしそうな道具立てなのだが、カーのようなケレンが薄く、淡々と進行していくため怪奇味は希薄であり、これは勿体無い。
探偵キャラクターも魅力が弱く、実際に黄金期に書かれた作品ならまだしも'60年代でこれはちょっとなあ。

謎解きのほうはスマートかつシンプルな盲点を突くもので、すごく筋のいいものだけれど、あっさりと語られるため盛り上がりきらなくて、肩透かしな感じを受けてしまう。これも惜しい。
また、よく考えると犯人の行動・計画には相当無理があるのだが、そこは古典へのオマージュとして許せるかな。
ただ、誤導が弱く、これが結果としてサスペンスの欠如に繋がってしまっていると思う。
まとまりは良いんだけれどもねー。

アイディアは素晴らしいが、プレゼンテーションがいまいちなため小粒な印象をあたえてしまう作品だと。あくまでマニアが楽しむ作品あって、一般向けじゃないよね。

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