帯には「詰め込みすぎ! 掟破りの密室死体消失連続トリック!」と書かれていて、実際その通りバリバリの本格ミステリです。
20年ほど前の新本格を更に暴走させたような、アイディアとプロットの密度の高さを持っております。展開があまりにご都合主義であったり、設定やキャラクターが破綻しているようなところは気になり、小説としては褒められたものでは無いですが。
構成には島田荘司の影響が強く見られます。幻想的で強烈な謎をアタマに持ってきて興味を引っ張る。のだが、この冒頭の大ネタは御大さながらの豪腕によって小説前半でほとんど解かれてしまう。そして、そこから別の強力な謎がいくつも立ち上がり、さらには過去の因縁話なども絡んできて、ミステリとしてのスケールも大きくなっていきます。
そして解決部分のどんでん返し(わざわざ章題にも「偽りの真相」とあります)。間違っていた解決も結構説得力があって面白いのですが、後から出される解決のほうが更に良く出来ていて、これもレベル高いね。多重解決にありがちな、どの解決でもいいんじゃないの? 的な状態には陥っていませんし、後出しジャンケンでもない。ただ、ロジックの妙は薄いです。論証自体の面白さは感じられなかった。
後、作中には誤導もいろいろ仕掛けられていて、こんなにあからさまでは、というものから、微妙すぎて普通の読者なら読み飛ばしてしまうんじゃ、というものまであって、なかなか愉しいです。
作者のミステリセンスは疑いないところでありますが、減点法で評価されると駄目でしょうね。とりあえず面白い本格ミステリが読みたい、という人向き。それ以外の配慮はない小説です、清々しいくらいに。
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