1968年リリース、ヴィブラフォン奏者によるバカラック・カバー集。
カル・チェイダーは元々ラテンのひとのようなのだが、このアルバムではそういうところは殆ど感じません。
そもそも個々のプレイヤーの個性が目立つようなつくりではないです(ドラムはジム・ケルトナーであって、流石と思う瞬間はありますが)。
チェイダーのソロもテクニックを披露するよりも、ゆとりを感じさせるような美麗なもの。
バカラックのメロディをそのまま生かしたアレンジの、イージーリスニング・ジャズといっていいでしょう。
では、毒にも薬にもならない、どこにでもあるような音楽なのか、というとそうではなくて。
このアルバム、全体の雰囲気がとにかく素晴らしい。
あらゆるエッジを周到に削ぎ落とした、ほのかに甘く、どこか茫洋としたサウンド。その中で、ヴァイブの音色だけが青白く輝く。
そして、曲をずっと聴いていると受け手である自分も、その仄かな光に向かって深く潜っていく、そんな印象です。
カル・チェイダーの、というよりプロデューサーのゲイリー・マクファーランドのセンスが強く出たものなのかな。
この夏、ボーカルものを受け付けないときに、繰り返し聴いております。クールでメロウな一枚。
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