2010-09-26

ジャック・リッチー「クライム・マシン」


330ページほどの中に14篇が入った短編集。
一番長い作品が表題作「クライム・マシン」であって、50ページ弱。相当手の込んだ犯罪が描かれているのだが、それにしては短い。説明・描写が簡潔なのだ。
その他はだいたい2、30ページのものが並んでいて、短いものは10ページにも満たない、ショートショートといっていいものであります。

収録作品は全て、アイディアをシンプルに提示すべく無駄を徹底して排除した文章で語られる。
前置き無しに始まる一人称はハードボイルド的であり、語り手の真意を正確に測ることができないので、時には叙述トリックめいた効果もある。
中でも短い作品ほどキレは素晴らしく、いくつかの作品では最後の一行で全てをひっくり返す。その技量はフレドリック・ブラウンに比肩する、と思う。
皮肉なオチのものが多いのだが、ハッピーエンドが逆説的に感じられるようなものもあって、単調には陥らない。収録された作品を続けて読んでいて「またこのパターンか」と思うと、まったく予想しない方向へ捻じれていったり、まさにオフビート。

粋でユーモラス、自在に展開しながら紛れも無いクライム・ストーリー。
まさにプロの仕事である。会話中心で進んでいくので読みやすい反面、軽い印象もあるけれども、そもそもミステリとはこういったものではなかったか。
ひとときの肩の凝らない娯楽を保障します。

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