2011-12-12

法月綸太郎「キングを探せ」


法月綸太郎、五年ぶりの長編は交換殺人もの。

序盤は犯人側の描写で占められます。それぞれに殺したい相手がいる四人の男が結託し、交換殺人を計画。トランプのカード四枚を標的になぞらえ、それを引くことによって、殺人の分担が決められる。
『キングを探せ』という題名は被害者探し、という趣向を示しているのか。

一方では、法月警視が自殺に偽装された殺人事件を担当することに。綸太郎とのディスカッションの中で鉄壁のアリバイを持つ容疑者に対し、共犯者の可能性が挙げられますが、なかなか事件の目鼻が付かない。

犯人たちには万全に思えた計画であったのだが、やがて大きなアクシデントが起こる。これにより複数の事件の関連が明るみに出、五里霧中であった捜査が一気に動き出す。少し綸太郎の勘が良すぎるように思うけれど、とにかく交換殺人という画が浮かんでくる。そうして、まだ他に関連した殺人があるのでは、というところまで辿り着きます。

半ばまでは読んでいても、捻った設定はともかく、倒叙としての面があってネタが割れているせいか、推理によってもたらされる意外性はちょい物足りない、と感じたのが正直なところ。

終盤に入り、警察及び犯人側双方が互いの手の内を知るに至って、相手の裏を掻くべく知恵比べが始まります。刑を軽くしようと奇策を打ち出す犯人と、付け入る隙を見出そうとする法月親子。ここから俄然面白くなってくる。

仕掛けられている大きな錯誤については、注意深く読んでいればある程度まで気付くのだけれど、それでも255ページを見た瞬間「?」となった。トラップを見抜いたつもりでいる事で引っ掛かる別のトラップ。事件の構造がひとつズレるのだ。
スマート!

しつこいロジックこそありませんが、形の美しい本格。アメリカの現代ミステリを意識した節も感じられる一作でありました。

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