2011-12-18

ジャック・カーリイ「ブラッド・ブラザー」


さあて、四作目まできたぞ。
舞台はアメリカ南部アラバマを離れ、大都会ニューヨークへ。その地で、これまでのシリーズでお馴染みのキャラクターのひとりが惨殺される。被害者は生前に自分自身を撮ったビデオの中で、カーソン・ライダー刑事を呼ぶ事を要請していたのであった。
NYに引っ張ってこられたライダーは、地元の警官たちに敵視されながらも捜査に加わる事に。そうして浮かび上がった容疑者はライダーの兄であり常人離れした頭脳を持つ殺人鬼、ジェレミー・リッジクリフ。
施設を抜け出した彼が、NYを舞台に暴れまわる。

デビュー時を考えると、ミステリとして本当に巧くなっていますね。
プロットは緊密。頭からケツまで無駄がなく、キャラクターの色付けのように見える些細なエピソードまでが必然を持って置かれていて。
また、ミスリードにはミステリを読み込んできたファンこそが迷ってしまうような微妙なものもあって、嬉しいところ。
一方で、意外性の演出には今までの作品と通じるパターンが目に付いて(特に前作『毒蛇の園』ね)、展開が見えるところもありましたが。

ジェレミーがどうして施設から出られたかという理由は、大まかになら早い段階で見当が付くもの。けれど作品後半、その詳細が明らかにされることで物語が大きく変質していく。ここらがこの作家の巧いところだよな。
ある程度読者の先読みを許しながら、それを上回っていく芸当は本当にお見事。

作品全体に張り巡らされた伏線もたまらない。
翻弄されたまま予想外のところに連れて行かれる、あっと言う間の400ページでありました。

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