2016-02-20

The City / Now That Everything's Been Said


1968年にリリースされたシティ唯一のアルバム。昨年秋に、米Light In The Atticからリマスター盤が出ました。
長文のライナーノーツがついていて、アルバム制作の背景について色々と知ることができます。オードの社長でプロデューサーのルー・アドラーは、第一にはキャロル・キングのレコードが欲しかったのであって、グループであることにはそれほど興味はなかったことや、制作時にはみな(ルー・アドラーが持ち込んだ)ローラ・ニーロのデビュー・アルバムを良く聴いていて、単にポップソングにとどまらないその音楽性から影響も受けていたことなど、なかなか興味深い。
音のほうは旧日本盤CDと比べるとかなり良くはなっていますが、もともとのミックスがあまりすっきりしないもののように感じます。また、チャールズ・ラーキーによればレコーディングはロサンゼルスで行われたそうですが、どこにでもあるような、特別なところのないスタジオだったということ。エンジニアもあまり聞いたことのないひとで、つまりは録音もいまひとつなのか。
まあ、それはともかく。

チャールズ・ラーキーとダニー・クーチマーは、キャロル・キングのソロ・デビュー盤「Writer」にも参加していますが、少人数での制作のせいか、この「Now That Everything's Been Said」のほうがぐっと親密な印象を受けます。
楽曲はひとつを除いてすべてキャロル・キングのもので、さすがにいいものばかり。"Snow Queen" はロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズが、"I Wasn't Born To Follow" はバーズ、タイトル曲はスプリング、"A Man Without Dream" はモンキーズが演っている曲。きっちりと仕上げられたそれらのヴァージョンに比べれば、ここで聴けるものはプロダクションが簡素で、それが物足りなくあり、また魅力でもあるか。サウンドの隙間をアイディアで埋めていこうという姿勢は個人的には嫌いじゃない。
しかし、まあジム・ゴードンのドラムの見事なこと。そのせいで、逆にほかのメンバーの不安定さが目立つような気もしますな。

欠点はあれどいとおしい、そんなアルバム。'68年という時代を反映しているように、楽観的な雰囲気もいいのですね。

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