2016-02-28

カーター・ディクスン「貴婦人として死す」


1943年作品の新訳です。
不倫の末の、崖からの飛び降り心中。地面には二人以外の足跡はない。単純に思えた事件だったが、後日発見された死体は射殺されており、その凶器も現場からかなり離れたところから発見された、というお話。
第二次世界大戦を背景にしていて、ヘンリ・メルヴェール卿が登場するまでは神経症的な雰囲気も漂っています。

語り手は事件が起こる家と付き合いのあった老医師。彼の目撃したことによって、事件は犯人の足跡の無い不可能犯罪としての様相を呈するのだが、この件を穏便に処理したい弁護士らは、故人の名誉を守りたい医師が証拠を改ざんすることで単なる自殺を他殺のよう見せかけているのだ、と主張する。
真犯人は誰なのか? そしてトリックを弄したのは犯人か、被害者自身か、あるいは語り手なのか?

オカルト趣味の味付けは皆無で、表面的な派手さも控えめなのですが、読み終えてみれば実に良く出来たミステリです。
メイントリックは手が込んでいるけれど理解はしやすく、効果も絶大。事件の展開には偶然が作用するところがあるものの、それをフォローする伏線も充分。
そして何より、真相開示の呼吸が素晴らしい。

カーというとごてごてしたイメージがあるかもしれませんが、これは力がこもっていながらスマートな仕上がりの作品ですね。
さて、次は『絞首台の謎』なのかな。

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