2016-11-20

アガサ・クリスティー「親指のうずき」


トミー&タペンスものの第三長編。発表は1968年というから、前作になる『NかMか』から27年経過しており、作中の二人もそれだけの年齢を重ねているようです。
なお、クリスティ自身の前書きによれば、ファンからの要望に応えてこのカップルを復活させたようであります。

トミーが出張している間、ある老嬢の行方を突き止めるべくタペンスが奮闘。これが物語の前半を主に占めるのですが、加齢とともに行動力が衰えた分、おしゃべりが増量され、正直、読んでいてかなりだれます。もちろん、その中には手掛かりも潜んでいるわけなのですが、膨大な噂話として語られている内容が事実かどうかはっきりしないままである上に、本筋とは関係なさそうなやりとりが多いのです。純粋にミステリを期待して読むときついかも。
で、そうこうするうちにタペンスに危機が迫って、というクリスティのスリラーではお馴染みの展開に。

もはや何の新味もないお話だけど、トミーとタペンスが元気ならそれでいいかあ、なんて気持ちで読み進めていくと、終盤にはちょっとした驚きが。唐突、といったほうが適切かな。そして、そこからの迫力はちょっとしたものであり、同時に時代への目配せも感じられます。

プロット全体がご都合主義によって構成されているようだし、切れの悪いミスリードなどほめられたものではありませんが、なんだかんだいって楽しめました。八十前の年齢にして、なおも読者の裏をかいてくれる、それだけでもう十分嬉しいです。

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