もう、いまさら大していうこともないぐらいの作品でありますね。再・再読くらいです。
金田一耕助ものとしては二作目の長編で、
『本陣殺人事件』完結後に間を置かず雑誌連載が始まり、翌年の1948年に完結。『本陣~』は戦前を舞台にしていましたが、『獄門島』作中ではそれから九年経過しており、発表時期とさほど離れていない年代のお話になっています。
ミステリとしては童謡殺人の趣向を見事に日本に移し変えてみせたプロットは勿論、他にも西洋産のトリックをうまくアレンジしているのが見所ですね。特に、有名な「気ちがい」の科白は元を知っていると余計に感心させられる。
また、複雑な犯罪計画もさることながら、犯行の事後処理を人目についている、もしくは他人がそばにいることをわかった上で行っている点、これが凄く大胆で好みです。
そして、事件全体の底を抜いてしまうような(ある程度予想はつくけれど)残酷で皮肉な結末がなんともいえません。旧いかたちの日本の終わりを見事に描いた、とも思います。
現代のものさしで測ると手掛かりに後出しっぽいものがあるし、犯罪の細部にも無理筋なところが見られるのは事実ですが、そんなことは問題にしないほどにアイディアが豊富で、楽しめました。論理遊戯のためだけに創られた悲劇の島、それを成立させた雄大な構想には流石、のひとことです。
あと、やっぱりセンスがモダンですねー。
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