2017-08-16

Dusty Springfield / A Brand New Me: The Complete Philadelphia Sessions


ダスティ・スプリングフィールドのフィラデルフィア録音集、米Real Gone Musicからリリース。ダスティ・ミーツ・ギャンブル&ハフであるこれらの曲、今回のリイシューでは全曲が新たに8トラックからミックスし直されたという点が大きいです。

収録曲のうち10曲目までがアルバム「A Brand New Me」(1970年)から。ただし、曲順はオリジナルとは全然違うものになっています。
リミックスの成果ですが、音質は非常に良くなっていますし、全体に曲のエンディングが長くなりました。その一方でバランスをいじったことでサウンドの質感が少し変わっています。ソウルっぽい臭みや、初期フィリーらしさは薄れたように思うし、迫力を増している分、繊細さも損なわれているのではないかしら。ボーカルがとても生々しく聴こえるようになり、ポップスとしてはより明快なものになったのですが、う~ん。オリジナル・ミックスとどちらが優れているか、という話ではないのだけれど、旧いライノ盤のCDも大事に置いておいたほうがいいか。
いずれにせよ、いい曲、いい歌唱揃いのアルバムではあります。


残り7曲はアルバムリリース後である'70年2月の録音で、殆どがボーナストラックなどのかたちでこれまで発表されてきたものですが、初登場の曲もひとつあります。
制作当時にはリリースされなかったこれらも、アルバム本編と比して見劣りするとは感じません。全てトム・ベルがアレンジを手掛けていて、通して聴いていて統一感があるのもいい。未発表であった "Sweet Charlie" は落ち着いた調子の曲ですが、これもしっかりと作られたものです。

ダスティ・スプリングフィールドは英本国においては(クレジットはされていないものの)共同プロデューサーとしてレコード制作をしていたのに、米国では出来上がってきたオケに歌を乗せるだけで、かなりストレスを感じていたそうだ。特に、アルバム「A Brand New Me」では選曲に関わることもなく(作曲はすべてケニー・ギャンブルが関わったもの)、曲を覚えてすぐに歌入れという仕事であったよう。しかし、考えようでは非常にプロフェッショナルなアルバム作りであったともいえるのではないかな、プロデュースは一切こちらにまかせときなさい、というのは。もう少しシンガーとしての自分に自信を持てていたら、米国での活動も違ったものになっていたかもしれないな、なんてことを思いました。

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