2017-08-06

Laura Nyro / A Little Magic, A Little Kindness: The Complete Mono Albums Collection


ローラ・ニーロの初期作品をモノラル・ミックスで収録した2CD、米Real Gone Musicからのリリース。マスタリングはヴィク・アネシーニが担当。

ディスク1に入っているのはヴァーヴからのデビュー・アルバム「More Than A New Discovery」(1967年)と "Stoney End" のシングル・ヴァージョン(アルバムとは歌詞が異なるもので、初CD化)。
この「More Than~」、これまでは「The First Songs」と改題して出し直されたステレオ盤がリイシューされていましたが、その「The First Songs」では曲順だけでなくミックスもオリジナル・ステレオとは異なっており、特に "Wedding Bell Blues" ではエコーがやたら深くかけられ、"Stoney End" においては音が歪んでしまっていました。
今まで、オリジナルの「More Than~」に使用されていたモノラルおよびステレオ・マスターはもう残っていないと思われていたのですが、入念にリサーチをやり直した末にモノラルのマスターテープが発見されたということです。
実際に聴いてみると、これはナチュラルな気持ちいい音。マスターがあまり使われていなかったからか、アネシーニによるマスタリングのおかげか、クリアでなおかつ聴き疲れしない。素晴らしい仕事です。



ディスク2はコロンビアに移ってからのアルバム「Eli And The Thirteenth Confession」(1968年)に、"Eli’s Comin’" のシングルエディットと "Save The Country" のシングル・ヴァージョン(「New York Tendaberry」のものとはまるっきり別アレンジ)を収録。
「Eli~」のモノラルはラジオプロモ向けに作成され、一般には出回らなかったもの。これもマスターテープをソースにしたということですが、ミックスそのものはステレオからのフォールド・ダウンなんですね。しかし、そう教えてもらわなければなかなか気付き難いだろうバランスのとれたミックスに(結果として)なっています。音質もいい。
きらびやかさならステレオ・ミックスのほうに分がありますが、このまとまりの感じられるサウンドも捨てがたい。ステレオ盤を聴いてやかましい女だな、と思ったひとにはこっちのがいいかも。



厚めのブックレットは非常に情報量が多いもの。新たにチャーリー・カレロやボーンズ・ハウにインタヴューしていて、とても読みでがあります。これによれば、Verveからのデビューに際してチャーリー・カレロも呼ばれてローラ・ニーロに会い、その歌も聴いていたのだが、カレロのスケジュールが開いていなかったのでそのときは共に仕事をするには至らなかったそうだ。それで、カレロと同様にフォー・シーズンズを手掛けていたハーブ・バーンスタインが担当することになったわけだと。
また、「Eli~」のリズムセクションとボーカルはスタジオライヴ形式で録音したが、ときにはボーカルの差し換えがあったとも認めています。

ともあれ聴いていて、惚れ直したというか、やっぱりいいな、と思いました。ポップソング、ソウル、ジャズが混じり合いながら、他の誰にも似ていない音楽。"Eli's Comin" のただ事ではない性急さはいつ聴いてもぞくぞくする。
まあ、「More Than A New Discovery」のモノラルだけでも充分に価値のあるリイシューじゃないすかね。

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