2017-11-24

Popeye - Deluxe Edition: Music From Motion Picture


1980年に制作された映画「Popeye」のニルソンによるサウンドトラック、その拡大盤2CD。Varese Sarabandeからのリイシューです。

まずディスク1はサントラ。ニルソンが書いた曲を出演俳優たちが歌ったもので、レコーディングは撮影と並行して、映画のロケ地であるマルタ島で行われました。ベーシックトラックの演奏はニルソンのほかレイ・クーパー、ダグ・ディラード、ヴァン・ダイク・パークス、クラウス・ファアマンらによるもので、あとから管弦がヴァン・ダイクのアレンジの元、L.A.で録音されました。
歌っているのがニルソンではないため、楽器の使い方からどうしたってヴァン・ダイクの作品という印象を受けます。独特のマジカルでドリーミーなオーケストレイション。特に、"Blow Me Down" という曲では'60年代後半のバーバンク・サウンドと共通する雰囲気がたまらない。ここでのロビン・ウィリアムズの歌声がちょっとボー・ブラメルズのサル・ヴァレンティノを思わせるんだな。また、"He's Large" のオケもまんまヴァン・ダイクのソロアルバムと変わらないような優美なもので、いいですね。
なお、今回のリリースでは元のサントラ盤には無かったスコアも収録されているのですが、それらにはニルソンやヴァン・ダイクは関わっていません。フルオーケストラによる重厚かつクラシカルなもので、録音はロンドン。映画のサウンドトラックという点では意義ある収録なのでしょうが、音の感触がまるっきり違うので個人的には混ぜないで分けて入れて欲しかった。

ディスク2はニルソンによるデモ集で、前半がL.A.のゴールド・スター・スタジオ、後半がマルタ島に移ってからの録音。シンプルながらファンからするとサントラよりこっちの方が馴染みやすいな、やっぱり。音質もばっちり。映画には使われなかった "Everybody's Got To Eat" もこれぞニルソンと思わされる麗しい出来であります。
また、女優のシェリー・デュヴァルに "He Needs Me" の歌い方を指導している様子も収録されており、これが実にインティミットでいい雰囲気。ところどころデュエットになっているのがまたいいですね。これはアルバム「Flash Harry」セッション中に行われていた模様。
そして、ボーナストラック扱いで "Everybody's Got To Eat" の映画用ヴァージョンと、あとはホームデモが3曲収録されております。ホームデモはピアノ弾き語りをポータブルのテレコで録ったような音ですが、諧謔味の薄い、素のニルソンが垣間見えるようではあります。

ブックレットのライナーノーツは関係者にインタビューした上で書かれた非常に詳細なもの。監督のロバート・アルトマンはニルソンについて、あいつはやめとけ、と皆から忠告されていたこと。そして案の定、ニルソンがプレッシャーからアルコールを手放せなくなり、なんとかヴァン・ダイク・パークスが仕事を進行させていたこと。劇伴のスコアもヴァン・ダイクが手掛ける予定であったが、ミュージシャンのストライキによって果たせなくなったことなどなど、読み応えは充分。

実のところ、このサントラ用のデモというのは昔からアンダーグラウンドでは出回っていて、その中には今回のリリースとはヴァージョンの違うものもあるのですが、さすがに切りがないか。
ともあれ、ニルソン、ヴァン・ダイク・パークスどちらのファンにとっても楽しめるリイシューだと思います。

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