2018-03-17

Wynder K. Frog / Shook, Shimmy And Shake: The Complete Recordings 1966-1970


オルガン・インスト・コンボ、ワインダー・K・フロッグがアイランド・レコードに残した音源集3CD、英rpmからのリリース。
三枚のアルバムのうちファーストとサードは素性の怪しいところからリイシューされていましたが、オフィシャルなかたちで初めてのCD化となります。さらにシングル曲、宣伝用ソノシートからの曲、BBCセッション、そして未発表アルバムの曲まで入った大盤振る舞いのセットです。
なお、ワインダー・K・フロッグというのは元々バンド名だったわけですが、それがいつのまにか鍵盤奏者、ミック・ウィーヴァーの芸名になっていったそうであります。



「Sunshine Super Frog」(1966年)はウィーヴァーがセッション・ミュージシャンたちと共に制作したファースト・アルバム。
スリーヴノーツにはプロデューサーがジミー・ミラーで、いくつかの曲ではニューヨークで制作したバッキングトラックにロンドンでオルガンをオーヴァーダブした、と書かれていました。ところが、盤自体にはアイランド・レーベルのボス、クリス・ブラックウェルがプロデューサーだと表記されていたのです。今回のライナーノーツを読むと実際にはブラックウェル、ミラー、そして当時レーベルのアレンジャーであったシド・デイルがそれぞれに制作したものより構成されているそう(ミック・ウィーヴァーによれば、レコーディングにはジョン・ポール・ジョーンズが参加していたとのこと)。そのためか(基本線はブッカーT&MG'sあたりだとは思うのですが)ソウル色の強いもの、当時のヒットソングのカヴァー、ストリングス入りのムーディな曲が混在。いずれもウィーヴァーのハモンドはご機嫌なものの、一枚のアルバムとしてはややまとまりには欠ける印象です。
また、マテリアルとしては当時のアイランドらしくジャッキー・エドワーズの曲が3曲取り上げられていて、そのうちひとつはスペンサー・デイヴィス・グループがヒットさせた "Somebody Help Me" であります(さらに翌年にはシングルで "I'm A Man" もリリースしています)。



ファースト・アルバムのしばらく後にウィーヴァーはグループの他のメンバーと袂を分かつことになります。そして、以後のライヴを共にしてきたプレイヤーたちとともに作られたのがセカンド「Out Of The Flying Pan」(1968年)で、こちらはガス・ダッジョンがプロデュース。サウンドの感触がぐっとシャープで、タイトなものになっています。
全体にファンキーな要素を強めつつジャジーな要素も加わって、モホークスあたりと張り合っても遜色のない格好良さ。いかにもモッズ受けしそうなダンスナンバーが多くて、三枚のアルバムのうちでは一番好みですね。楽曲は引き続きカヴァーが中心ですが、ウィーヴァー自身による2曲のオリジナルにおける洗練はなかなかのもの。また、このアルバムでは鍵盤は勿論いいですが、いくつか実にセンス良いギターも聴くこともできます。



「Out Of~」リリース後、しばらくは活動が順調にいっていたのですが、メンバーたちに他のところから大きな仕事の声がかかり、ミック・ウィーヴァー自身も他所のバンドに参加することで、グループとしてのワインダー・K・フロッグの活動は停止。ウィーヴァーはもう自分のグループを率いていくことに興味が無くなってしまいます。
それでも三枚目にして最後のアルバムが1969年に制作され、翌年に「Into The Fire」として米国のみで発売されました(「out of the frying pan, into the fire」というイディオムで「一難去ってまた一難」の意だそう)。楽曲のほうはオリジナルが多くを占めるようになっているのですが、純然たるジャズファンク、鍵盤が入っておらずブルースハープが主役のもの、南部ソウル色濃いボーカル入りのスロウ、まるっきりジミー・マグリフのような渋いオルガンジャズなど多様なものがあって、もう商売抜きでモッズ的な趣味を突き詰めたというところでしょうか。一方では、ラフなギターが入っているのも特徴であって、これまでになくロックバンド的なテイストも感じられる瞬間も。


さて、今回のリリースには'68年、「Out Of The Frying Pan」より前に制作されながらも、これまで未発表であったアルバムが収録されております。ソースはアセテート起しだそうですが、充分に聴ける音にはなっています。
プロデュースはマフ・ウィンウッドで、管楽器があまり使われておらずソウルっぽい装飾は控えめ。バンドらしいというか比較的エッジの効いたサウンドで、当時のクラブでのライヴはこんな感じだったのかな、と思わせる熱のこもった演奏です。また、いくつかの曲でのひとつのリフを執拗に繰り返すような展開は、後々のファンク化への方向性を感じさせるもの。
「Out Of~」との収録曲のダブりは二曲だけであって、ひとつの独立した作品としてもそこそこ良いのではないかしら。


流行に対応しながらも一環してセンスの良さが感じられる、ハモンド好きには堪えられない3枚組でありますね。

0 件のコメント:

コメントを投稿