2018-04-21

パーシヴァル・ワイルド「探偵術教えます」


お金持ちのお抱え運転手、ピーター・モーランは勘は悪いが人当たり良く、若い女の娘にめっぽう弱い。もっか通信教育で探偵術を学んでいるのだが、生かじりの知識を実地に試しているうちにさまざまな犯罪に巻き込まれてしまう。そして、まるっきり事態を把握せず、勘違いしたまま行動しているうちに何故か事件を解決に導いてしまう。


1940年代後半にEQMMを中心に発表された短編をまとめた連作集。単行本収録の7作品に、後に書かれた1作を加えたシリーズ完全版になっています。

収録作品中、最初の「P・モーランの尾行術」がユーモア・ミステリとしては一番良かった。すれ違いのシチュエイション・コメディとして良く出来ているし、スラップスティックとしても出色。ピーターが最初から最後までずっととぼけた調子なのもいい。
そのあとのいくつかは面白いけれどプロットのパターンが同じなので、一話完結型の連続ドラマを見ているようだ。なんとなく怪しい人物はいるけれど明確な謎があるわけではないこれらには、探偵行為はあっても推理の妙には乏しいので、より純粋なユーモア小説としてのテイストが強い。

それが後半になってくると、事件を解決してきた実績を買われて、ピーターのもとにちょっとした問題が持ち込まれるようになる。そして、ピーターがお手上げになってしまった事件の話を聞いて、他の人間が解決してしまう、というパターンが生まれる。それほどかちっとした謎解きではないが、伏線もちゃんとある。
そんな中では「P・モーランと消えたダイヤモンド」が、大学で探偵小説を学んだという女の子が活躍して、ジャンルのパロディとしての面が全開。ピーターの暴れっぷりも実に楽しい。また、単行本では最後にあった「P・モーラン、指紋の専門家」ではシリーズを締めくくるのにふさわしい、ちょっとした捻りがあって、これには思わずにやりとさせられる。

何より肩が凝らず、楽しく読める一冊でありました。

0 件のコメント:

コメントを投稿