新訳ヴァン・ダイン全集、その二巻目ですが前作の
『ベンスン殺人事件』より5年経っているのね。凄く悠々としたペースであります、さすが古典。
この『カナリア~』には大きなトリックが二つあるのだけれど、昭和の時代には色んなところで言及されていまして、それもあまり良い扱いじゃないほうで。まあ、それだけわが国でかつては影響力があった、ということでもあります。
それはともかく。前作『ベンスン~』と同じく凄く気合が入った読み物ですね。だれ場もない。『ベンスン~』と比べるとプロットに中盤の捻りが加わり、事件の複雑性も増しています。ファイロ・ヴァンスのキャラクターもより厭味でいい感じです。
その一方で、手掛かりや伏線の出し方は下手ですね。トリックの解決などまったく唐突です(ヴァンスは霊感が降りてきた、とかなんとか言っていますが)。また、真犯人も今の目からするとバレバレ。
読みどころはやはり雰囲気になりますか。なんだろうな、この迫力は。パイオニアである自負からくるのか、オリジナルの強さなのか。
ポーカーを通じて容疑者の性格を分析する趣向など、当時はそれなりに自信のあるアイディアではあったのでしょう。実にはったりが利いていて楽しいです。
まあ、はっきりいってマニアかおっさん向けであって若い人には勧めませんが、個人的には面白く読めました。
次はいよいよ『グリーン家殺人事件』ですな。どれだけかかってもいいのでせめてシリーズ前半の6冊は出していただきたいものです。
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