2018-05-13

Chris Bell / I Am The Cosmos


「I Am The Cosmos」、その決定盤としたい2CD。昨年に米Omnivoreからリリースされたものです。

クリス・ベルはビッグ・スター脱退後、その生前にはシングル一枚しかリリースしていません。アルバム一枚分のマテリアルは制作してあったものの、レコード会社の十分な関心を得るに至らなかったのだ。1992年になってライコディスクがそれらを纏め上げたのが「I Am The Cosmos」というタイトルのCDであります。そして2009年にこのアルバムのデラックス・エディションがライノ・ハンドメイドからリリースされた際には、ライコ版から曲順が少し変更されていました。Omnivoreからのものは、さらに未発表のものが追加されていますが、アルバム部分についてはライノ・ハンドメイド版の曲順を踏襲してあります。


このアルバム、半数近くの曲ではビッグ・スターのメンバーが演奏に参加していますし、クレジットされていないもののアレックス・チルトンとの共作曲もあります(ビッグ・スターから脱退する際、チルトンとベルの間で共作曲はそれぞれが分け合うという話し合いがされていたそう)。実際、初期ビッグ・スターの延長ですから、いいに決まっています。しかし、全体とするとサウンドの抜けがいまひとつな感じも受けるのだなあ。
レコーディングは地元メンフィスとフランスで行われ、後にジェフ・エメリックのもと、ロンドンのエアー・スタジオでオーバー・ダブとミックス。そして、さらにその後メンフィスで色々と手直しがなされたそう。で、思うに曲によってはスタジオワーク好きのベルがいじり過ぎたのではないかな。エコーを深くしたのはジェフ・エメリックのセンスらしいのですが。
アウトテイクや別ミックスの数々を聴いていると、演奏の表情が生き生きと伝わってくるようで、パワーポップとしてはこっちのが格好良いのが多いな。

それでも、タイトルになっている "I Am The Cosmos" は(4ヴァージョン収録されているのだけれど)シングル・リリースされたものが一番ですね。幾重にもオーバー・ダブされたギターが共鳴、干渉しながら絡み合って形成されている音の層は独特の美しさ。メランコリックな曲調もテープスピードを上げることで(これはレーベル・オーナーであったクリス・ステイミーのアドヴァイスだそう)、ちょうどいい塩梅のものになっているのだと思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿