1944年のノンシリーズ長編。
はじめのうちに暗号が提示されるものの展開としてはスリラー、最後になって謎解きがまとめて押し寄せてくる、といった感じの作品です。
主人公の女性が感じる不安には二つのベクトルがあって。森に棲むように思われる超自然の存在と、素性の胡散臭い人物に代表される現実的な脅威。人が欲望に囚われた末に得体の知れないものになってしまう、というのが作品のテーマのひとつではあるけれど、次元が違うものが混ぜこぜになっているようで、どうにも説得力が薄く感じられてしまった。
サスペンスが中途半端に思えるうえ、具体的な事件が起こるのも終盤、そのうえ暗号も難解とあって、なかなか読み進める気が起きなかったのが正直なところ。マクロイでこんなに苦戦したのは初めてだ。
で、解決編なんですが。
フーダニットとしてはやや緩いし、伏線にも乏しいのではないかな。一方で遠い過去に属する事柄が読み替えられる趣向はさすがマクロイ、といったところであります。
また、暗号そのものはともかく、鍵となるものとそこへ辿り着くロジックも好みですね。
丁寧に作られた作品ですが、どうも個々の要素が有機的に絡んでいないようで、すっきりとしないな
(暗号小説であることそのものがフーダニットにおける誤導として生きていればよかったのだけれど)。個人的に今回はあまり合わなかったですね。
八月に出る『悪意の夜』に期待しましょう。
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