2025-03-20
ジェローム・ルブリ「魔王の島」
このフランスの作家さんの長編はふたつ翻訳されているのですが、その評判はどちらも毀誉褒貶相半ばというところ。下げているほうも本気っぽいようなのをお見受けして、逆に興味をひかれた次第。まあ、読んでみなければ始まらない。
この『魔王の島』は──2019年に発表された第三長編で、母国では賞も獲得しているそうだ──「何を言ってもネタバレになる」らしく、おまけに「アンフェア」だと。面白そうではないか。
と読み始めたのだが、いきなりはじめの方にえぐい描写があって、気持ちを挫かれてしまう。
舞台はノルマンディーの孤島。第二次大戦後にそこでは大変な事件があったらしい。37年が経ち、当時より島に住み続けていた女性、シュザンヌが亡くなった。それを受けて孫娘にあたるサンドリーヌが事後処理のために島に渡る。以降、カットバックで時代を行き来しながら、祖母と孫の体験が語られる。
最初は読み進めるのに難儀しました。物語がどういう種類の展開をするのかが見当が付かない上、物語の雰囲気が暗いのだ。サンドリーヌは表立っては口に出さないが、ずっと嫌な感じがしていて早く帰りたいと思っている。
140ページを過ぎたところでようやくミステリらしい事件が起こる。ああ、なるほど、こういう話だったのかとここで合点がいきました。もっと早く気付いても良かったくらいだ、と。
ところが、そういう話にはならなかった。あれあれ、と思っているうちにファンタスティックな要素をはらみつつ、島に隠されていたおぞましい秘密が明らかになっていきます。
と、思ったのだが。章が変わり、話もがらりと変わる。確かに予想しようもない展開です。ミステリの作法から言えば大いに問題があるのだが、違うジャンルの小説なら珍しい趣向ではない。何より、作品の結末近くでこれをやられれば腹を立てるかもしれないが、まだ全体の半分にもきていないのだ。
そして、ここからは謎解きの物語が始まります。ちゃんと探偵役もいて、かなり流れが分かりやすく、テンポも良くって読みやすい。ただし、明らかになっていく事実はかなり胸糞が悪い。なおかつ、まだまだ奥がありそうであって、嫌な予感を覚えながらもぐいぐいと引っ張られ、読み続けざるを得ない。
結末は、こう来るのね、という感じ。推理できるように作られてはいませんが、構成からするとそれほど無理のある着地ではない、と思いました。額縁小説としての内側は綺麗にまとまっているのだから、これで充分ではないか。
なかなか面白かったです。陰惨なのは苦手ですけれど。同じ作者の『魔女の檻』も既に買ってあるので、そのうち読みます。 しかし『魔王~』、『魔女~』ともKindleにはなかったのだが、他社からは電子書籍が出ているのね。
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