2026-02-23

エラリー・クイーン「シャム双子の謎」


1933年長編。
山火事で孤立した屋敷を舞台にした、クローズド・サークルものであります。殺人事件の謎と、次第に迫ってくる自然の脅威の二本立てですが、ミステリとしてはクイーンの初期作品中でもかなりシンプルなほうだと思う。容疑者がはじめから限られ、その行動範囲も狭いのです。

一見、些末に見えるような細かな謎はいくつもあるのだけれど、メインとなるのはダイイング・メッセージの謎だ。
ダイイング・メッセージというのは解釈の恣意性が大きいので、せいぜい短編を支えるくらいの趣向だと思うのだが、ここではそれをひたすらこねくり回し、長編を成立させてしまっている。メッセージの意図に対して鮮やかな解釈を披露しながら、そこから更なる展開を見せ、終盤では他の国名シリーズ作品に登場するヨードチンキや靴紐に伍するような、「ここまでわかるのか!」と思わせる推理がなされるのだ。ここがクイーンならではの快感であって、よそではなかなか得難いものなのだな。

推理以外の要素があることで、全体におけるミステリ純度としてはこれ以前の作品より薄くなっているのですが、それによってクライマックスにおける謎解き場面がひときわ印象的なものになっているのだから、文句はない。
本書の帯には「〈国名シリーズ〉最大の異色作登場!」とあるのですが、中期以降の作品に通ずるテイストもあるな、などと今回読み返していて感じました。

以前はそれほどでも、と思っていたのだが、いや、やはりこれも力作ですな。

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