2012-08-14

チャイナ・ミエヴィル「都市と都市」


架空の現代都市を舞台にしたSFだが、設定が恐ろしく奇妙でかつ魅力的なもの。
その領土が複雑に入り混じり、ときには同じ空間を共有してさえいるふたつの国「ベジェル」と「ウル・コーマ」。異なる文化や言語を有するだけでなく、国民たちはそこに存在するもうひとつの国の建物や人物を直視することが禁じられている。そして、他国の領域を侵犯した者は、不可蝕で超越的な外部権力「ブリーチ」によって除去されてしまうのだ。
こうやって説明すると不条理というか頭でっかちっぽいのだけど、作品内ではしっかりと描写されることによって、なんだかありそうなものとして受け入れさせられてしまうのが凄い。

そんなベジェルにおいて女性の刺殺死体が発見されるのだが、国内には被害者に該当する人物が見つからない。一体、彼女はどこから来たのか、そして、犯人は誰なのか。やがて、捜査の過程で浮かび上がってきたのは、伝説上の第三の都市。

正直、あまりとっつき易い小説ではない。また、作品内で世界のルールを丁寧に説明してくれるわけではないので、自信の無いひとは先に解説に目を通しておいたほうがいいでしょう。
けれど、読み進めていくと途中からは都市の持つ謎と殺人事件の捜査が有機的に絡みあって、ぐいぐいと引っ張られていく。
そして後半、物語の様相が一転・二転。「プリズナーNO.6」を思わせるところもあって、ミステリなんだかSFあるいはファンタジーなのか、プロット上の落としどころをどういうレベルでつけるのかが、最後まで見当がつかない。

いや、無茶な世界を破綻無く書ききった力作ですな。筋を追うことに汲々としていては楽しめないかも。まずは異世界ものならではの醍醐味を堪能していただきたい。

0 件のコメント:

コメントを投稿