2012-12-25
ジョン・ディクスン・カー「曲がった蝶番」
若い頃、アメリカに渡る際に沈没したタイタニック号に乗り合わせた過去のあるファーンリー家の次男ジョンは、今ではケント州にある屋敷の当主に落ち着いていた。だが、我こそは本物のジョン・ファーンリーだと主張し、その証拠もあるという男が現れる。弁護士立会いの下、二人のジョンがまさに決着を付けんとするときに怪事件が。
ここ最近、創元が力を入れているカー新訳、1938年だからこれも作者に脂の乗っていた時期の作品ですね。旧『曲った蝶番』は大昔に読んでいるのですが、記憶はあいまい。上に書いたような設定はなんとなく覚えていたけれど。
ミステリとしては衆人環視下の犯罪、いわゆる準密室なのですが、それに加えてどちらのジョンが本物なのか、事件は自殺なのかそれとも他殺なのか、という問題も絡んでなかなかに広がりのあるものになっています。更に悪魔崇拝の儀式や不気味な自動人形による怪奇趣味も充分。
また、プロットもミステリのルーティンを意識しつつ、そこからずらした展開が愉しいし、途中で披露される仮説も手が込んでいてと、とにかく読者を飽きさせないサービスが満載です。
さて、真相なのですが。
終章で明らかにされる強烈なトリックは推理困難なものであり、その異様なテイストは乱歩が好みそう。ただ、全体に色々と手を広げ過ぎたせいか、解決全体として見るとごたごたしている感は否めないところ。細かいひとなら証言の扱いがアンフェアだと思うのでは。
カーの個性が非常に強く出た一作であって、好みは分かれそうですな。完成度は置いといて、個人的には無類に面白かったのですが。
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