2012-12-02
Tami Lynn / Love Is Here And Now You're Gone
タミー・リンというニューオーリンズ出身の女性シンガー、1965年にバート・バーンズ制作で "I'm Gonna Run Away From You" をリリースしていますが当時は話題にならず、その後はセッションシンガーとして活動していたそう。1971年にはジェリー・ウェクスラーから声が掛かり、マイアミのクライテリアスタジオにおいてウェクスラー&ブラッド・シャピロの元でシングルを制作したものの、これもヒットには結びつかなかった。しかし同年、イギリスの所謂ノーザンソウルシーンで前述の "I'm Gonna Run Away From You" に火が付いたそうで。そのイギリスでのリイシューを企画したジョン・アビイというひとが、タミーをマラコスタジオに連れて行って作られたのが、「Love Is Here And Now You're Gone」(1972年)というアルバムです。
アナログA面にあたる前半はメドレーというか組曲風で。収録されている4曲は全てカバーなのだけれど、その間を語りが繋ぐことでひとつのストーリーが構成されているという具合。
頭から3曲は控えめな演奏による、カントリーを隠し味にしたようなしっとりしたスロウなのですが、丁寧で表情の細やかなボーカルがしっかりと嵌っています。中では、タイトルにもなっているスプリームスのヒット曲がメロディはそのままにぐっとテンポを落としたものになっていて。淡々とした演奏を背景にすることで、展開をはらんだメロディが一段と際立っているようで、気に入りました。
そして、スロウがずっと続いた最後にはキャッチーなミディアム "That's Understanding" が来るのだけど、これがそれまでの抑えに抑えた流れからの開放感もあって、ばっちり決まった。
対して、アルバム後半はポップで軽快なダンサーが中心になっていて、あっさりした唄い口は曲調に合っていると言えばそうなんだけど、ソウルのプロパーなファンにはもの足りなく感じられるかも。
ただ、最後にはマイアミ制作のシングル両面が続いていて、それらはタイトで都会的なテイストのサウンド。呼応するようにボーカルも力強く、これには満足。
軽量級ではあるけれど、南部らしい甘さを滲ませた佳品だと思います。やはりロマンティックな前半がしっかりと作られていて良いな。
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