ライノ編纂によるドニー・ハザウェイの4枚組アンソロジー。パッケージのデザインやディスクの収納は、以前にフランスのライノから出たこれも4枚組の「Someday We'll All Be Free」に合わせたようでもありますが、今回はブックレットの記載が英語で書かれているので、まあ読めないことはない。
取り出しにくいのよな・・・ |
ディスク1は「Favourites」と題され、スタジオ録音から選ばれたものが収録。シングルで出された曲に関してはモノラルミックスが多く採用されています。
収穫はソロデビュー以前にカートム・レーベルより出された、ジューン・コンクェストという女性とのデュエットによるシングル曲ですね。いかにもシカゴらしい華を感じさせるミディアム "I Thank You Baby" と力強いスロウ "Just Another Reason"、いずれもドニーとカーティス・メイフィールドの共作であり、レアなだけではなく非常に出来も良いです。
ディスク2は全て未発表の13曲からなる「Unreleased Studio Recordings」。多くがアルバム「Extension Of A Man」以降の録音であるのが興味深いところ。
このアンソロジー全体のタイトルにもなっている "Never My Love" はアソシエイションがヒットさせた曲をピアノ中心のスロウに仕立てたもの。メロディを強引に崩した唄いまわしで、原曲の良さがまるっきり残っていないため、ちっとも面白いとは思わないのですが、人によっては心洗われる、とか感じるのでしょう、きっと。
その他、カントリー調の曲や、軽やかにスイングするポップソング、カラフルなフュージョン・インストとして聴けるものなどバラエティに富んでいますが、所謂ソウルミュージックらしさに縛られていないのは、いかにもこのひとらしい。ただ、"Zyxygy Concerto" という曲はオーケストラを従えた、なんと20分ほどあるクラシカルなインストゥルメンタルで、流石にこれはきついな。そんな中で、ドニー流ニューソウルど真ん中といった感じのミディアム "Memory Of Our Love" と 独特の展開をはらんだスロウ "Sunshine And Showers" が抜群の出来栄えです。
また、もっと初期の録音もありまして。1968年のものだという "Don't Turn Away" と'70年代初期ではないかと推測されている "Always The Same" の2曲がそれで、どちらもパワフルなノーザンで気に入りました。
1972年にリリースされた「Live」はLAのトルバドールと、NYのビター・エンドでの演奏から構成されていましたが、うち後者での公演は二日で5セット行なわれたそう。ディスク3「Live at The Bitter End, 1971」はその「Live」用に録られたビター・エンドでの素材のうち、未発表であったパフォーマンスが収められています。
「Live」では観客の反応がやけに大きくミックスされていましたが、今回のものではそういった演出はありません(実際、ビター・エンドの観客はトルバドールと比べて大人しかった、という話です)。リラックスした雰囲気も強く感じられ、演奏をじっくり聴きたいむきには、これもいいのではないでしょうか。個人的にはここで歌われている "What's Going On" のほうが余計な力みが少なくて、「Live」でのものより好みかなあ。
一枚のライヴ盤としてもちゃんとした流れがあって、良いですよ、これは。
最後のディスク4「Roberta Flack & Donny Hathaway Duet」には珍しいものはありませんが、ロバータ・フラックとのデュエットがこの一枚にまとまっているのは便利ですな。正直、色気に欠けるというか、真面目×2という感じがして、あまり好みの音楽ではないのですが。
4枚組のうち2枚が未発表のものだけで占められていますが、決して墓場荒しに終わっておらず、ライノらしい丁寧な企画だと思います。輸入盤なら値段もかなり安いしね。
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