2015-01-24

The Iveys / Maybe Tomorrow


軽快な演奏に、時にバブルガム的であるキャッチーさ。1969年に制作されたアイヴィーズの唯一のアルバムは、当時は日本と西ドイツ、及びイタリアでしかリリースされなかったそうであるけれども、それもうなずけなくはない。時代に対してちょっとそぐわなさそうなポップスであって、やはりビートルズ、しかも中期あたりの影響が非常に強く感じられます。ジャケットの方もニコッと笑顔で、アイドル然としたものだ(しかも、どうやらこの写真は左右反転しているらしい)。
急いで仕上げられたせいか全体にもこもこしたミックスもまた、いかにも垢抜けなさを感じさせますな。このアルバム収録曲のうちいくつかは翌年、バッドフィンガーとしてのデビュー盤「Magic Christian Music」にリミックスされた上で流用されるわけなんだけれど、そちらのほうが骨格のはっきりした明快なものに仕上がっているのは確か。

プロデュースは彼らをひいきにしていたアップルのマル・エヴァンズが5曲、残り7曲をトニー・ヴィスコンティが担当。
ヴィスコンティによれば、もともとは売れっ子プロデューサーであったデニー・コーデルがシングル盤の制作を請け負ったらしいのだけれど、走ったり遅れたりを繰り返すグルーヴの悪いドラムに我慢がならず、アシスタントであったヴィスコンティに丸投げするかたちでセッション途中に出て行ってしまったらしい。そして、なんとかそのシングルを完成させたヴィスコンティが、その流れでアルバムトラックも(グリン・ジョンズの助けを借りつつ)仕上げた、ということだそう。

ギターを中心にした陽気な曲調から、大胆にオーケストレーションを配したミドル・オブ・ザ・ロードなものまで、バラエティに富んだアレンジは逆に個性を弱めてしまっているところもあるのだけれど、後のハードポップとは違うクリーンなギターの音など'60年代ポップスのファンにはなかなかにたまらない。
また、作曲はピート・ハムとトム・エヴァンスが大体半分ずつを分け合うかたちでありますが、ピートらしい泣き節はこのころは未だなく、その分、トムがとても瑞々しいメロディの "Beautiful And Blue" や "Maybe Tomorrow" を聴かせてくれます。

全体にまだ青臭さを残した、未成熟なポップソング集であり、これ単体ではどうということは無いのかもしれませんが。いや、この軽味や無邪気さが今となってはなんとも捨て置けないな、と。

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