2015-01-31
三津田信三「シェルター 終末の殺人」
編集者兼作家である三津田信三は「シェルター 終末の殺人」という長編作品を構想していた。
「世界規模の核戦争が勃発した後、ある核シェルター内に生き残った数人の男女の間で、有ろうことか連続殺人が起こる。下手をすると自分たち以外の人類はすべて死んでいるかもしれない極限状況の中、なぜ連続殺人が発生するのか」
その取材の為に、三津田は実際に核シェルターを備えた屋敷を訪れたのだが・・・・・・。
カバー裏の作品紹介には「"作家三部作" に連なるホラー&ミステリ長編」とあるのですが、今作においてホラーの要素は控えめ、クローズドサークルでの連続密室殺人を描いたミステリとして展開していきます。誰が犯人かは勿論、なぜ、初対面の人々の間で連続して殺人が、しかも密室となった部屋で起こるのかが大きな謎。
事件の大枠は三津田自身のアイディアを具現化しているように見えたが、やがて別の物語をなぞっているのでは、という疑念も浮かび上ががってくる。このあたりから、謎がさらに深いものになっていきます。犯人うんぬんよりも、全体として一体何が起こっているのか? を強く意識させられるのですね。また、ことさらにメタフィクション性が言及されるわけではないが、使われている密室トリックの人工性が強いため、読者からすれば虚構性を意識せずにはいられない。
大雑把な構造はクリスティの『そして誰もいなくなった』なわけで、読者の期待値が高まるなか予想をどう外すか。解決はとても丁寧に組上げられているにも拘わらず、設問の難度が高い分、印象が弱くなったきらいは否めません。
それを措いても、後半の展開がスリリング。充分に愉しみました。
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