2年前に義母を殺した咎で逮捕され刑務所の中で病死した男、ジャッコは実は無罪だった。学者であるキャルガリは暫く英国を離れていたため事件のことを知らずにいたのだが、ジャッコのアリバイを証明することができたのだ。キャルガリは新事実を告げにジャッコの家族たちに会いに行く。だが、彼らにとってジャッコの無罪は決して歓迎したくない事態のようであった―。
1958年発表になるノン・シリーズ長編。過去の事件の再調査ものですが
『五匹の子豚』のように回想シーンが続くわけではない。心理的な要素を強調するための趣向かな。
故人であるジャッコは一家の厄介者で、犯人としてふさわしい存在であった。そして、ジャッコが無罪であったとすれば当然、他に真犯人がいるというわけだ。家族たちはお互いに疑心暗鬼になり、静かに不安が高まっていく。
ミステリとしては鮮やかな解決シーンが楽しめるものですが、犯人が自ら墓穴を掘るようなところがあって、推理の妙だけを取ればやや軽め。それでもドラマを書き込むことによるミスリードというか、登場人物を単なる駒として扱いつつ、それを気取らせないのはキャリアの賜物かな。
また、犯行シーンのひとつにはとても大胆かつ印象的なものがありますね。
50年代のクリスティ作品には出来にムラが大きいように思うのですが、これは力の入ったものでした。
派手さはありませんが、面白かったす。
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