2016-03-05

アガサ・クリスティー「蒼ざめた馬」


歴史学者のマークがたまたま居合わせたカフェで女性同士がつかみ合いの喧嘩を始める。そのうちのひとり、タッカートンという女性は髪の毛を引き抜かれるありさま。結局その場は無事に収まったものの、一週間ほど後になって、マークは新聞記事で彼女が病死したことを知る。
一方、路地裏で撲殺された神父が隠し持っていたメモ、そこには数人の名前がリストになっており、なかにはタッカートンという名前もあった。調べてみると、ほかにも既に亡くなっている人物がいるようなのだ。


1961年に発表されたノンシリーズのスリラー編。
推理作家のオリヴァ夫人ほか、何人か過去の作品でのキャラクターが再登場。ポアロもの(『ひらいたトランプ』)とミス・マープルもの(『動く指』)両方の世界が重なっていることは興味深い。

さて、この作品の大きな特徴はオカルト要素の導入でしょう。魔術でひとを殺すことができる、といってはばからない女性、すなわち魔女が登場します。登場人物たちは「そんなことはありえない、魔術なんて、ばかばかしい」と何度も繰り返し否定しますが、現に何人もの死人が出ているわけで。実際にはいったい何が起こっているのか? 暗合やほのめかしを重ねて雰囲気を高めながら、物語は進んでいきます。

クリスティのスリラー作品の例に漏れず、プロットのつくりはかなり強引です。決定的な手掛かりも終盤になってから唐突に出されますが、そこから明らかにされていく犯罪計画は意外かつ独創的なもの。また、細かな伏線が一気に収束していくので、ミステリらしい手応えは充分あります。

軽快な語り口もあって、読後感も悪くない。期待するものを間違えなければ、かなり楽しめる作品ではないかと。

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