1962年に発表された戯曲を三作収録。
どの作品も一幕ものであり、プロットも短編程度しかありません。ただ、それぞれの内容は独立しているけれど、実際の舞台では続けて上演されたそうであります。
「海浜の午後」
のどかな日常の中に犯罪が持ち込まれてくるという、コメディ要素のある作品。
隠されていた設定などはいかにもクリスティらしいものなのだが、伏線には乏しいのでミステリ的な興趣は薄い。これはやはり喜劇的な芝居に多くがかかっているように思う。
「患者」
ツイストの効いたプロットと盲点を突くような真相を備えたフーダニット。犯罪の容疑者が一堂に集められる時点から物語が始まるので、最初から密度が高い。
戯曲として読むと不自然な行動まではっきりと書かれてしまうのが難ではありますが、手掛かりは示されているし、しっかりとしたミステリになっています。
「ねずみたち」
登場人物が4人しかいない犯罪劇。被害者は姿を現さないし、警官も声だけ。それだけに何が企まれているのかがじわじわと判明していく、その際の緊張の高まりが見事。
読み物としてみると、真相が判明した後がいささかくどいように感じられてしまうのだが。
戯曲という形式上、あまり複雑な仕掛けはできないわけですが、どれもわかりやすくて意外性も備えた作品でありました。
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