2016-05-18

クリスチアナ・ブランド「ハイヒールの死」


1941年に発表された、クリスチアナ・ブランドのデビュー作です。
ときどき、とてもオーソドックスなスタイルで書かれたパズラーを読みたくなる。で、過去に二度ほど読んでいるはずなのに、そのわりにはあまり内容は覚えていない、この作品を久しぶりに手に取ってみたのだけれど。

ユーモラスで軽妙なテイストが強調されていますが、いやあ、読みにくい。
扱われているのは女性ばかりの職場で起こった毒殺事件。しかし、この女性たちは属性の似た人物が多くて、ある程度のところまで読み進めていかないとなかなか区別がついてこない。
また、誰に毒を投入する機会があったかというのが当然、問題になるわけですが、現場の人の出入りが多い上に、建物の構造は読んでいてもわかりにくい。

主人公であるチャールズワース警部は若く、思い込みの激しいキャラクターです。物語途中での推論は穴だらけで非常に頼りないのだが、紆余曲折の末に、最終的には鋭いところを見せてくれます。
ただ、真相に気付くきっかけとなるものは説得力が弱いし、パズラーとして見ると、この手掛かりの出し方はだめじゃん、というものも。

登場人物たちの精神的な暗部が垣間見えるところや、終盤になって容疑者がくるくると入れ替わる趣向などはブランドらしいといえますが、それらも後年ほどの切れはまだありません。
面白い伏線もあって個人的には楽しく読んだけれど、この作者のものとしては落ちる出来かな。

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