ある教師の家に派遣されてきたタイピストのシェイラ。依頼者が留守であることから、彼女は居間で待っていることにした。時刻の合っていない時計がいくつも置かれているその部屋で、やがて彼女は恐ろしいものを発見してしまう……。
1963年に発表されたエルキュール・ポアロもの長編。ポアロが登場するのは物語が半ばになってからで、それ以後も出てくる場面は余り多くなく、安楽椅子探偵といった役割です。中心になって描かれているのは諜報部に属する青年と警官の捜査で、そのせいでスリラー味が強く感じられます。
この作品、はじめのうちは凄く面白いのです。語りはいきいきとしているし、不可解な事件がつるべ打ちであって、ミステリとしての引きは充分以上。
また、いったん片付いたと思われた事案が崩れ、その後に新たな事件が起こるという展開も良いです。
しかし、最後まで読むと、やはり歳をとってからのクリスティは、作品を細部まで作りこむことができなくなっていたのだなあ、と思ってしまった。
犯人の推理をすることは読者にとっても可能なのだけれど、それ以外の部分があまりに手掛かりに乏しい。ある古典的な大技を使っているのだが、あまりに雑なやり方であって、ちょっとあきれてしまった。
物語結末でのツイストは時代に対応しているようで、悪くないとは思うのだけれど。
大風呂敷を広げて、解決は平均未満という感じでした。
ポアロを出さないでおけば謎解きにそれほど期待せずに、これでも納得したかも。
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