金田一耕助ものとしては三作目の長編。1948~49年に雑誌連載されたそう。
首の無い死体を扱っているのだが、凶器をめぐる不可能状況や夢遊病の登場人物(タイトルはそこから来ている)などがさらに事件を錯綜させる。
物語の前半は東京で展開。事件発生後二ヶ月すると舞台はまたも岡山に移り、そこでようやく金田一耕助が登場。
道具立てには露悪的というか扇情的なところが目立ち、現代の作家が書いたら問題になるだろうが、スピーディで派手な展開や、全体に強く漂う探偵小説趣味が読んでいて実に楽しい。
ミステリとしてはあこぎなほどトリッキーだ。読み慣れた人間ならとりあえずその可能性は疑うのだが、それでも引っ掛けられる(そこに腹を立てるひともいるだろう)。明らかにされる犯罪計画の細部には辻褄合わせのような粗いところが多いし、あまりに都合よく事が運びすぎるのだが、メイントリックの衝撃と熱のこもった文章の勢いで押し切ってしまう。
複雑に見えた事件がとてもわかりやすいかたちに解体されていくのも良く、もっとも強固な謎が逆に解決の糸口になる、というのが実にスマートです。
瑕疵も目立つけれどダイナミックで力強い作品ですな。抜群に面白かった。
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