2019-04-22

フラン・オブライエン「ドーキー古文書」


アイルランドはダブリンの海岸近くにある町、ドーキー。そこでミックは化学者にして宗教学者のド・セルビィという紳士と知り合う。ド・セルビィは時間の流れを司る発明に成功、さらには地球上の生命体を絶滅させる研究を進めているという。はじめのうち半信半疑だったミックであったが、およそ信じ難いような体験をさせられ、密かにド・セルビィの人類滅亡計画を妨害することを決心する。


1964年作品。白水社からは同じ作者の『第三の警官』『スウィム・トゥー・バーズにて』も出されているが、それらよりもかなり後になって書かれた作品だそうであります。

設定は非常に相当に出鱈目で楽しいものだ。なにしろ、物語はじめから『第三の警官』の影のヒーローであったド・セルビィの登場となれば、期待してしまうのだが。枝葉の多いぐだぐだしたやりとりと、どこかのんびりした展開で、なかなか盛り上がらない。宗教談義が多いのも、わたしにはピンとこなかった。
物語後半に入るとジェイムズ・ジョイスそのひとまでが現れるのだが、さて。

ユーモラスな要素には事欠かないものの、なにしろオフビート。お役所に勤める主人公は人類の危機に接している筈なのに、日が落ちたら残りは全て後日に、といった風情であります。いくつかの大問題の往く末も実に間の抜けた、エンターテイメントの常道を予想して読んでいたら唖然とさせられる処理であります。

およそファンタスティックな要素が最後にはうっちゃられ、居酒屋にてみんなで良い気分。定型的なドラマツルギーの拒否が逆に痛快、非日常をおちょくっているようなそんな物語でありました。

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