2023-12-20

平石貴樹「スノーバウンド@札幌連続殺人」


誘拐とその後に起こった殺人事件、その過程が関係者たちによって不規則なリレー式に書き継がれる。
はじめは誘拐犯が殺され、その殺人犯を探すという話なのだが、背景にある暴力教師や宗教団体が絡みだして、事件の様態がどんどん変わっていく。

十代の若者たちによって内輪向けに書かれた部分が多く、ときにそれらは唐突に途切れて次の書き手へと渡される。それによって不自然さをある程度カモフラージュしているようである。それでも流れの中で明らかに浮いている箇所があって、何か隠されているのか、あるいは誤導なのか。

誘拐事件に関して、ある可能性に思い至るのは難しくないだろう。うまくいけば、そこから芋づる式に他の事件の真相も見えてくるかも。
実際、個々の手掛かりはかなり分かりやすい形で転がされているのだ。ただ、全体像を描くには心理的な難度が高い。裏付けもちゃんと書き込まれているのだが、それでも想像力が要求されることは間違いない。
また、推理困難な手の込んだトリックも一つあるのだけれど、わざわざそんなものを使わざるを得なかった動機もうまく説明されているので、不満にはならないですね。

何気にアイディアてんこ盛りであり、フェア(だと思います、これは)でガチガチの謎解き小説でした。

0 件のコメント:

コメントを投稿