劉慈欣の
「三体」シリーズ三部作、その二次創作であります。
物語はシリーズ完結編である
『三体III 死神永生』の裏面、という感じで始まり、主人公は『死神~』の登場人物であった雲天明(ユン・ティエンミン)。『死神~』の終盤では、意図的に人間ドラマの部分を断ち切っていて、そうしてより大きなスケールのヴィジョンを提示しえた、と思うのです。それがこの作品では一旦、個の問題に戻ります。大きな役割を与えられながら、語られることはなかった雲天明の辿った運命が明らかにされるのですが、その過程に本家『三体』では説明がされなかった部分の謎解きがふんだんに盛り込まれていて、これがとても楽しいのです。
そして、三部構成の二部にはいったところで、物語はがらりと変わります。そこからが「三体」シリーズからさらに次へと踏み出した、この作品のオリジナルな部分であり、宇宙規模のホラ話が繰り広げられます。
非常に密度高くアイディアが盛り込まれ、面白く読んだのだけれど、さすがに本家のような圧倒的な迫力はないです。
作品の多くの部分が対話によって展開されているので、動きに乏しい。また、説明で手一杯になって、描写が物足りないので、あまりイメージが広がっていかないのですよ。ゆえに説得力も弱くなっていると。
あと、これは言っても詮無いかもしれませんが、馴染みあるキャラクターたちへの違和感は否めません。
「三体」シリーズを読んでいないと、何のことやら、という箇所も多いですし(特に終盤)、あえてふざけてみたところもあって。凄くよくできてはいますが、あくまで二次創作、ファン向けでありますね。
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