2008年にEMIから出された、ハーマンズ・ハーミッツの音源を未発表のものやピーター・ヌーンのソロも含めてまとめたCD4枚組。副題は「The Mickie Most Years 1964-1972」。
ずっと気になってはいたのだけど、同じようにEMIから出たホリーズの「Clarke, Hicks & Nash Years」が悪くないものだったので、昨年になって入手しました。
内容としては、ミックス違い等は別にすると当時の彼らの曲は殆ど入っている模様。ホリーズのものが制作時系列に沿って曲を並べていたのに対して、こちらは英オリジナルアルバム三枚と米盤「Blaze」の収録曲に関しては、その曲順を残すような編集になっております。
マスタリングはピーター・ミュウがクレジットされていますが、ホリーズのものもそうであったように、レアトラック以外は既発CDの音源を流用しているようです。正直、この盤は音を綺麗にしようとする余り、ちょっと勢いや空気感に乏しいものになっているようではありますが。僕は熱心なファンというわけではないので、そんなに不満でもないです。
ただ、アマゾンのレヴューでも触れられていますが、何故か "You Won't Be Leaving" という曲が2回入っているというミスが。あと、楽曲クレジットを記した文字が異様に小さく、ちょっと読む気にはなれない。こういう雑なところに、彼らは軽視されている存在なのだなあ、と思わないではないですが、まあ、徳用品というのはこんなものなのかな。
クリックしてもらえれば元の倍のサイズで読めますが、文字の小ささはわかると思います |
ハーマンズ・ハーミッツというのはそもそもティーンエイジャーの女の子をターゲットにしたポッププロダクトです。プロデューサーのミッキー・モストは、ピーター・ヌーンの顔は若いときのケネディに似ていていい売り物になりそうだ、という理由で彼らと契約したそうであります。
当然、演奏の多くはセッション・ミュージシャンによるもので、選曲はモストが決定していました。グラス・ルーツと競作となった "Where Were You When I Needed You" など、英国産ポップの曲が並んでいる中で、いきなりロサンゼルスのスタジオの音がして驚いてしまいます。
その音楽からは彼ら自身の志向性などというものはあまり感じられませんが、だからこそ良いとも言えます。サイケデリック時代に至っても表現者としてのエゴ、なんていう退屈なものに毒されずにいたわけですから。
ミッキー・モストは彼らのキャラクターにぴったりな曲を用意してきたのであり、そのキャラクターの賞味期限が切れるとともに、彼らの時代は終わってしまいました。しかし、今聴いてもそのヒット曲の数々はなんとチャーミングでしょうか。